その日、教師に髪のことで注意を受けたからこんな気持ちになったのだと思う。


その美しい黒髪を



「なぁ…髪、梳いてもいいか?」
「………は?」

一護の突然の申し出に、ルキアは持っていた櫛を落としてしまった。

「先にお風呂に入って」

遊子にそう言われてルキアは風呂に入った。織姫に勧められたボディーソープで体を洗い、お気に入りのシャンプーで髪を洗って………
そしていつものように、勉強を教えてもらおうと一護の部屋に向かった。一護の部屋にはドライヤーがあるからそこで髪を乾かそうと思って櫛を持っていった。
勉強をする前に髪を乾かしておこうと櫛で梳いていた時に一護が「梳いてもいいか」と尋ねてきた。

「一護…どうしたのだ?」
「ダメか?」
「いや…ダメと言うわけではないが………」
「じゃあ櫛を貸せ」

戸惑うルキアから櫛を取ると、一護はルキアの髪を梳き始めた。
最初は驚いていたルキアだったが、優しく梳く感触に心地よくなる。

「ついでだから乾かしてやる」
「え?別にそこまでしなくても…自分でやるぞ?」
「いいから」

一護はドライヤーを手に取ると、そのままルキアの髪を乾かし始めた。
珍しく強引な一護に首を傾げながらも、ルキアは「ならお言葉に甘えて…」と乾かしてもらうことにした。

「お前の髪ってさ…本当に黒いな」
「突然何を言い出すのだ…一護?」

お互い暫く黙っていたが、一護がボソリと呟いた。いきなり髪の色のことを言われてルキアは困惑する。
そんなルキアを気にすることなく、一護はドライヤーを止める。そしてクシャクシャになったルキアの髪を再び梳き始めた。

「一護…一体どうしたのだ?」

再び優しく梳かれて心地よくなってきたルキアだったが、何とか意識を集中させて一護に尋ねた。
一護は一瞬手を止めたが、「別に…」と言って再び髪を梳き始める。

「あのな…その『別に』が気になるのだ。何故、突然私の髪を梳こうと思ったのだ?」

少し語調を荒くしてルキアは一護に言った。
「う…」と口篭る一護。だが暫くして観念したように呟いた。

「教師に髪の色をどうにかしろって言われたんだよ………」



いつものことだった。
地毛だというのに教師はいつも髪の色を注意してきた。
何度言っても理解してもらえず、だんだん面倒くさくなっていたので適当にあしらうようになった。
それが気に食わないようで教師は更に注意してくる。それを回避するために勉強をしていい成績をとるようにした。
それでも日頃の態度からなっていないなどと絡まれる。正直、一護は嫌になっていた。
今日も突然髪の色について注意された。そしていつものように適当にあしらった。しかしそろそろ髪の毛のことで言われることがキツくなってきたのだ。

「何で俺ってこんな髪の色してんだろ?」
「………は?」
「親父は黒いし、おふくろは茶色かったな…なんで俺はオレンジなんだ?」
「一護?」

ルキアは声をかけるが一護は自分の世界に入ってるようで聞こえていない。

「ああ…でも夏梨とか遊子がこんな髪の色じゃなくて良かったか。女だし、オレンジなんて嫌だろうな」

「俺も嫌だし」と一護は続ける。
ちなみに一護は今までのことを全て口に出していることに気付いてなかった。本人は心の中で呟いているつもりだった。しかし、それは全てルキアに聞かれていて………

「一護!!」
「うおぅ!!」

大声で呼ばれて一護は我にかえる。
「ビックリしたじゃねぇか!」と一護はルキアを睨みつけようとしたが、逆にルキアから睨みつけられる。思わず一護は一歩引いてしまった。

「な…なんだよ?」

何とか言い返した一護。するとルキアは眉間に皺を寄せながら言った。

「私は好きだぞ!!」
「は?」
「教師が何を言ったかは知らぬが、私は一護の髪の色が大好きだ!!」
「………え?」

一護は戸惑う。髪の色を好きと言われたのは初めてで、どう反応していいかわからなかった。

「綺麗な色ではないか。優しくて温かくて………貴様に合ってると私は思うぞ。だから自分のことをそんなに卑下するな」

その色が好きだと思ってる私まで卑下されてるような気分になる…とルキアは続けた。
そんなことを言われたのも初めてで、一護は何だか恥ずかしくなってきた。思わず俯いてしまう。そんな一護にルキアは微笑みながら言った。

「貴様の両親が貴様に与えてくれたものだ。大切にせねば」

その言葉に重みを感じ、一護はコクンと頷いた。



「悪い…髪、途中だったな」
「別に気にしてないぞ」

一護は再びルキアの髪を梳き始めた。ルキアは気持ちいいようで目を閉じている。
先程のルキアの一言を思い出す。
髪の色を好きと言われた。優しくて温かくて自分に合っていると。両親が与えてくれた大切な色だと。
その言葉で救われた。いつも彼女に救われているような気がする…そう思った。

「俺さ…お前の髪の色、好きだ」
「そうか?黒くて重たい感じがするだろう?」
「いいや。綺麗だよ。お前に似合ってる」

一護はそっとルキアの髪…首筋にキスをする。ルキアはビクンと体を跳ね上げた。

「一護!?」

キスされた部分に手を当てて、ルキアは一護を睨みつける。だが………

「俺…お前が大好きだよ」

と、いつになく優しく微笑まれてルキアは絶句した。そのまま一護はルキアの額や頬にキスをしていく。

「ちょっ………!一護!!」

ルキアは体を捩って抵抗する。しかし耳元で。

「大好きだよ…ルキア」

と言われてしまえば抵抗することなどできず………むしろ体の芯が痺れてしまう。
ルキアは観念したように一護の背中に腕を回した。

「………莫迦者」

それを聞いて、一護は嬉しそうに微笑んだ。








一周年ありがとうございます!!

サイト一周年ありがとうございます!!まさか一年続くとは思いませんでした…
これもこんな辺境サイトに遊びに来てくださった皆様のおかげです!!ありがとうございますm(__)m

珍しく強気な一護さんのお話です(笑)最初はちょっと凹んでますが……
大人なルキアさんに支えられて一護さんは頑張ってるってお話のはずが、素敵にセクハラ話へと変化しました(´V`)
偶にはいい思いをさせないと…と思ったらこんなことになったのです(笑)
多分三作品の中で一番セクハラ度は高いと思います☆
この後の展開は皆様にお任せしますvvワタクシが続きを書くことは絶対にありません♪

一周年記念ということで、こちらの作品はフリーです。
文章を変えないでくだされば、どんな風に弄ってもかまいません。
ただし、サイト掲載時にはワタクシのサイト名を小さくてもよいので書いてください。
それと、背景のお持ち帰りはおやめください。
サイト掲載の報告は自己の判断にお任せしますが、報告していただければ泣いて喜びます!!

フリー期間終了しました。ありがとうございました。

最後になりましたが辺境サイト「六花」をこれからもよろしくお願いします。



up 08.02.24

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