何故こうも、彼女と一緒に行動しなくてはいけないのだろうと思う。


放課後の教室で



「で…日直というのは何をすれば良いのだ?」
「……………」

目をキラキラと輝かせながら、ワクワクといった感じで尋ねてくるルキアに一護は思いっきり溜息をつくことで返事をした。
そんな一護の態度に腹が立ったのか、ルキアは一護を睨みつけた。

「一護………貴様、さっきから何故私のことを睨むのだ?私が何かしたか!?」
「べっつに〜」

ルキアにそう答えながら、一護は心の中で溜息をついた。


朽木ルキア。ある日突然一護の目の前に現れた少女……それは見た目だけで、彼女は死神だった。
ルキアが体を張って一護と家族を守ってくれ、一護を死神化してくれたおかげで、今こうしていつものように過ごしているのだが………
勝手に自分の家、それも自分の部屋の押入れに住み着いているのに納得がいかない。
しかも、死神や虚の関係で一緒にいることが多いからか、最近では妙な噂が学校内で飛び交っていた。

黒崎と朽木さんは付き合っている………と。


冗談じゃないと思った一護は、学校ではできるだけルキアに関わらないようにしているのだが………
そんなことに気付いていないルキアは、いつものように話しかけてくる。そして。
今日のように、出席番号でのことになるとどうしても一緒になってしまう。出席番号が同じだから。
今朝、日直だと知った瞬間、隣にいた水色が嬉しそうに笑っていたような気がする…と一護は思った。

「一護!!」

ルキアに呼ばれて一護は我に返った。顔をルキアに向けるとルキアは頬を膨らませて一護を睨みつけていた。
時々可愛いことするよな〜と思いながら、一護は「何だよ」とルキアに言った。

「だから!日直とは何をすればよいのだ!?」
「………ああ」

怒り気味のルキアに対し、一護はマイペースに答えた。

「この日誌に今日の授業内容とか、欠席者とか書いて…あとは黒板消しとか、カーテン閉めとか。まぁ…雑用だな。あと、日誌は書いたら越智サンに渡す」
「ほう…それが日直の仕事か」

ふむふむと首を振って納得するルキア。そんなルキアを見て一護はある疑問が浮かんだ。

「なぁ…死神の学校って日直とかねぇの?」

一護に尋ねられて、ルキアは首を傾げた。

「そんなものはなかったな。あそこはココとは違って訓練の場といった感じだからな」
「へぇ………」

初めて聞くルキアの学生時代の話に少し興味を示した一護だったが。

「あ。早くしねぇと帰るのが遅くなる」

日直の仕事を思い出し、それに取り掛かることにした。



「とりあえず。俺が日誌を書くから、お前カーテン閉めたり黒板消してろ」
「何故だ?私もその日誌とやらを書きたいのだが……?」

ガサガサと筆箱からペンを取り出す一護。その横でルキアが不服そうに一護を見る。一護は溜息をつくとルキアに言った。

「日誌を書いたこともないお前に任せたら時間がかかるだろ?その間に虚が来たらどうするんだよ?」

別に虚のことなどどうでもよい。ただ早く帰りたいだけなのだが、そういえばルキアも納得するだろうと思い、一護はルキアに言った。
するとルキアは一瞬言葉を詰まらせたが、「わかった」と言っていそいそとカーテンを閉め始めた。一護はそれを横目で見ながら日誌を開いた。
シャ…というカーテンの閉まる音を聞きながら、一護は日誌を書いた。
カーテンの閉まる音が止んだのでルキアに視線を向けると、ルキアは黒板を消そうとしていた。
早くしないとルキアの仕事が終わるな…と思いながら、一護は先程よりも少し書くペースを早めた。

「終わった………」

ようやく日誌を書き終えた一護は椅子に座ったまま背伸びをする。そして、ルキアは終わっただろうかと見てみた。ところが。ルキアは黒板の前で神妙な顔をして唸っていた。

「おい…何黒板の前で唸ってるんだよ?」
「ああ…一護。実はな」

呆れたように尋ねる一護にルキアは真剣な表情で答えた。

「上の方がな…届かないのだ」
「……………ハイ?」

思いがけない答えに、一護は一瞬呆気にとられる。そんな一護に気付かずルキアはさらにどうしたものかと考えていた。
一護は本日一番の大きな溜息をついた。

「貸せ。俺がやる」
「は?」
「だから黒板消しを貸せって。俺がやった方が早いだろ?」

一護はルキアが持っていた黒板消しを取ろうとしたが、何故かルキアはそれを後ろに隠した。

「何隠してんだよ?」
「だめだ!これは私の日直の仕事だ!私がなんとかする!!」
「なんとかするって…届かないんだろ?俺がやった方が早いじゃん」
「できる!なんとかなる!!」

妙なところで強情なルキアに一護が呆れていると、ルキアはいいことを思いついたような顔をしてその場を離れる。
何をするつもりなのだろうと一護は目でルキアを追う。するとルキアは一番近くの机から椅子だけを持ってきて黒板の前に置いた。

「これに乗ってすれば届く」

そういって、ルキアは椅子に乗って黒板を消し始めた。

(強情なのは知ってたけど、ここまで頑なに拒否されるとかなりムカツク………)

普通女子ってやってやるって言ったら喜ぶのに…などと思いながら、一護はルキアに向かって手を伸ばした。

「いいから貸せって!俺がやった方が絶対早い」
「いいと言っておるだろう!しつこいぞ、一護!!」
「お前こそ強情なんだよ!!」

そんな言い合いををしながら黒板消しを引っ張り合う。ちなみにすぐ側にもう一つ黒板消しがあることに二人は気付かなかった。

「貸せってば!」
「いーやーだー」

譲らない二人。とうとう業を煮やしたルキアが思いっきり黒板消しを引っ張った。

「よし………きゃあ!?」

思いっきり引っ張って黒板消しを取り戻したはいいが、椅子の上に乗っていたことをすっかり忘れていたルキアはバランスを崩してしまった。

「ルキア!!」

一護もまさかルキアが倒れるとは思ってもいなかったので、思わずルキアに向かって手を伸ばした。
ガシャーンと椅子が倒れる音がする中、なんとか一護はルキアを抱きとめることができた。

「いって………おい。ケガないか、ルキア?」

一護は自分の胸にしがみついているルキアに尋ねる。驚きのあまりしばらく黙っていたルキアだったが、突然顔を上げて一護の顔を両手て挟んだ。

「大丈夫か!?一護!ケガはしてないか!?」
「あ…ああ」

必死に尋ねてくるルキアに驚く一護。ルキアは一護にケガはないかと顔や体を見回す。一護の上に乗ったまま。

(なんか…この体勢ってヤバくねぇか………?)

一護がそう思った時だった。

「一護ー!朽木さーん!!日直の仕事終わった〜?終わったなら一緒に帰ろう!!」

勢いよくドアが開き、ハイテンションな啓吾とそれをウザそうに見ている水色が入ってきた。

「「「「………………」」」」

途端に流れる沈黙。誰も何も言わない。今のこの体勢はどう考えてもルキアが一護を襲っているようにしか見えない。
ただ、ルキアだけは何もわかっていないようで、いきなり啓吾たちが入ってきたのに驚いて黙っているようだった。

「く………朽木さんが、一護を………イヤーーー!!!」

案の定、一番最初に沈黙を破ってくれたのは啓吾で。泣き叫びながら教室を走り去って行った。
呆然とそれを見ていた一護とルキアの横でクスリと笑い声が聞こえる。見てみると、水色が楽しそうに微笑んでいた。

「邪魔してごめんね。じゃあ僕、先に帰るから」

そう言って、水色はヒラヒラと手を振りながら教室から出て行った。



「浅野と小島は何を言っているのだ?」

突然いろいろ起きて驚いていたルキアだったが、ようやく落ち着いてきたのか素朴な疑問を浮かべる。それを横で聞きながら、一護は溜息をついた。

「あー…気にするな。勝手に誤解してるだけだから」

そうルキアにいいつつも、一護は先程のことが気になってしかたがなかった。
啓吾はともかく、水色は今日あったことを皆に言ってまわりそうだ。明日にはまた新たな噂がたっているだろう。



一護の悩みは絶えない。








久しぶりのイチルキSSです!!
ほんのりギャグ系にしてみました。最近切ないのが多かったので。
本当はもっとギャグだったのですが、一護が不憫になってきたので変えてみました(笑)
切ないのも良いですが、ギャグ系もいいですね。
今回のお話は初期の頃ですねvv
本当に出席番号が同じ設定は使えますね〜
日直ネタなんて、リョ桜では絶対に使えませんよ。
次は甘めに行こうかなと思っています。
とりあえず切ないのから離れようかな………と。
切ないのはしばらくリョ桜で(苦笑)
それにしてもギャグは書いてて楽しいです☆



up 07.09.06

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