腕時計をジッと見つめる。日付変更まであと10秒。
準備万端。あとは時間がきたら目の前の窓を開けるだけ。5…4…3…2…1……


誰よりも一番に



「一護!誕生日おめでとう!!」

ガラっと大きな音をたてて部屋の窓が開いたかと思うと、そこから満面の笑みを湛えたルキアが入ってきて一護は持っていたペンを落としてしまった。
しかしルキアはそんな一護の様子を気にすることなく、一護のベッドに腰をかけた。

「えっと…どうしたんだ?お前」
「貴様、さっき私が言ったことが聞こえなかったのか?」
 
呆然とする一護にルキアは大袈裟な程に大きな溜息をついた。

「誕生日おめでとう…と私は言ったのだが?」

「誕生日…」と呟いて、一護は机の上に置いてある携帯を覗き込む。ディスプレイの中の時計は7.15 0:05と書いてあった。
それを見て、いつの間にか誕生日を迎えていたことに一護は漸く気がついた。

「ホントだ。誕生日だ」
「何だ、一護。貴様、自分の誕生日を忘れていたのか?」
「いや…忘れていたっていうか、勉強してて気付かなかったっていうか」

この歳になったら誕生日なんてどうでもいいんだよなぁ…と思いながら、一護はルキアを見た。

「ところで、誕生日に気付かなかったということはまだ誰も貴様に『おめでとう』を言ってないのだな?」
「ん?ああ…そうだな」
「そうか。それは良かった」
「はぁ?何が良かったんだよ」

うんうんと満足げに頷くルキア。その様子に訳が分からないと言った感じで首を傾げる一護。
ルキアの行動がいまいちよく掴めない一護は、ハァ…と溜息をつくと勉強の続きをしようと机に向かった。しかし。

「一護!」
「……何だよ」

名前を呼ばれ、一護は眉間に皺を寄せながら振り返った…と同時に。バッとルキアが一護の目の前に小さな包みを差し出した。
咄嗟に一護はその包みを手に取る。一護が包みを受け取ったのを見て、ルキアは嬉しそうに笑った。

「何だ、コレ?」
「私からの誕生日プレゼントだ。ありがたく受け取れ!!」
「受け取れって……何威張ってんだよ、お前」
「文句があるなら返せ」
「いえいえ、ありがたくちょうだいします」

軽口を叩くように言う一護の態度に頬を膨らませるルキア。
おどけたような態度をとっていた一護だったが、内心ではとても喜んでいた。まさかルキアから誕生日プレゼントを貰えるとは思ってもいなかったから。
しかも誕生日の当日に。誰よりも一番に。

「ありがとう。コレ、開けてもいいか?」
「ああ…いいぞ」

礼を述べる一護のその穏やかな微笑みを見て、ルキアの心臓がドクンと高鳴る。頬に熱が集まるのがわかり、ルキアは俯いた。
ルキアの了解を得た一護はさっそく包みを開ける。そして中から出てきた物を見て目を丸くした。一護の手の上にコロンと乗っている物。それは………

「………袋?」
「袋じゃない!!!」

即座に否定するルキア。しかし一護には袋にしか見えない。
するとルキアが口を開いた。

「確かに見た目は袋だが、ここれは匂い袋だぞ!!!」
「匂い袋?」

言われてみれば、袋から微かに匂いがする。嫌いな匂いではないな…と思った一護は袋を鼻の近くに寄せてみる。
一護の様子が嫌なものではなかったので、ルキアはホッとした。匂いには人それぞれ好みがあるから、一護が嫌いな匂いだったらどうしようかと悩んでいたのだ。

「前に兄様に香の合わせ方を教えてもらって。その時に香には沈静効果があると聞いて……」
「うん」
「毎日勉強で疲れているだろうから、これで少し落ち着けたらいいな…と思って、香を合わせてみたのだ」
「じゃあコレ、お前が作ったの?」
「そうだ。匂い袋も私のお手製だぞ」
「そっか……ありがとな」

嬉しそうに一護が笑う。それを見てルキアも笑った。



「そういえば、お前こんな時間に現世に来て大丈夫なのか?」

現在、ソウルソサエティにいるルキア。あっちに戻ってからは忙しいからと滅多に会えないのに、今日は大丈夫なのだろうかと一護は心配になる。
しかしルキアは笑いながら言った。

「大丈夫だ」

その自信たっぷりな態度に逆に不安になる一護。

「今日は休みなのだ」
「休み?」
「貴様の誕生日だから、仕事を全部終わらせて休みを貰ったのだ。一番にお祝いしたかったし」

ルキアの言葉に一護は目を瞠る。

「じゃあ…俺に会うために、一番に誕生日を祝うために仕事終わらせて休みをとってくれたのか?」
「そうだ」

ニッコリとルキアは笑う。
一護は顔を真っ赤にして俯く。ルキアが自分の誕生日を祝うために頑張ってくれたことが嬉しくてたまらなかった。

「ありがとう」

照れ隠しのためにぶっきらぼうに言うと、クスクスと笑いながら「どういたしまして」とルキアが答える。
自分が照れていることにルキアは気付いているのだろうな…と思うと、一護は更に恥ずかしくなってしまった。

「さてと………」
「ルキア?」

徐にルキアは立ち上がると、押入れに向かって歩き始めた。

「一護。今日は大学は何時くらいに終わるのだ?」
「え?あー…今日は午前中で終わるかな。昼から暇だな」
「そうか。じゃあ家で待ってるから帰ってきたらランチとやらをするぞ」
「は?」

一護は眉間に皺を寄せる。話の内容がいまいち理解できない。何故ルキアとランチ?と頭にはてなマークを何個も浮かべる。
そんな一護を見てルキアは溜息をつくと、呆れ口調で言った。

「誕生日祝いにランチをしようと言っているのだ、全く」

そこまで言われて、一護はやっとランチの意味を理解した。
今まで自分がおごることの方が多かったから、ルキアがおごってくれるという発想が一護にはなかったのだ。

「そりゃどうも」

ほんの少し頬を染めながら礼を言うと、ルキアは満足気に「うんうん」と頷く。そのままルキアは押入れの戸を開けた。
また押入れで寝るつもりだな…と思った一護は、ルキアが押入れの戸を閉める前に尋ねた。

「お前さ、なんで一番に祝うことにこだわったんだ?」

仕事を全部終わらせて休みをとるくらいに。
するとルキアはほんの少し首を傾げながら答えた。

「何故だろうな?ただ、他のヤツに先を越されるのは嫌だと思ったのだ」

自分でもよくわからないと言った様子でルキアは押入れの戸を閉めた。

(それって…一応ルキアに好かれてるのかな、俺?)

うーんと一護は悩む。一護はルキアのことを好きだと自覚しているが、ルキアの反応はいまいちわからない。
さっきの会話を聞いてると好かれてはいるのだとは思うのだけれど、一護は少し不安に思っていた。
悶々とそんなことを考えていると、突然押入れの戸がスパン!と開いた。

「うわぁ!ビックリした!!」
「一護」
「何だよ、いきなり開けたらビックリするだろ」
「ああ、すまん。それより一護。さっきの匂い袋なんだが」
「ん?」

一護は机の上に置いてあった袋を掴み、コレか?とルキアに見せる。

「それ、私とおそろいだから無くすなよ」
「………へ?」
「じゃあおやすみ」

押入れの戸が閉まる。
暫く押入れを見つめていた一護だったが、戸が開く気配が全くないとわかると深い溜息をついた。

「なんか……さり気なく爆弾発言されたような気がする」



こんな感じで暫く無自覚お嬢さんに振り回されるんだろうなぁと思いながら、一護は匂い袋をそっと鞄の中に入れた。







Happy Birthday To Ichigo!!

一護=現世。ルキア=ソウルソサエティな遠距離恋愛設定が最近マイ☆ブームな管理人です(*´∀`*)
今回は友達以上恋人未満な二人のお誕生日です。
一護はルキアが好きと気付いてますが、ルキアは気付いてません(笑)気にはなっていますが。
二人が両想いになるのにはもう少し時間がかかると思います。そこに萌えを感じてます!!!

珍しくちゃんとしたプレゼントを渡してます(笑)
ここのサイトの管理人はまともなプレゼントをあげたことがない(´V`)
ちょっと別館とネタ被ってるとあとから気付きましたが、ジャンル違うので良しとします☆

お誕生日おめでとう!一護\(*´∀`*)/\(*´∀`*)/\(*´∀`*)/


up 09.07.15

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