その日。
仲良く歩いていた二人を目撃した者達は、思わず微笑んだという。


可愛い二人



「な………長かった」
「お疲れ様、一護」

疲労困憊の顔をしてガックリと項垂れる一護の肩を、ルキアが労わるように軽く叩いた。
ここはソウル・ソサエティ。
本日、一護とルキアは現世での任務内容の報告のために二人でソウル・ソサエティに来ていた。
いつもはルキア一人で報告に行くのだが、今回、総隊長がどうしても一護に会いたいと言うので、渋々ながら一護も一緒に報告に来たのだ。

「それにしても…なんであんなに話が長いんだ、あのじーさん」
「総隊長と呼ばぬか、莫迦者。………上に立つ者はどうしても話が長くなるものだ」
「いや…長すぎだろ?二時間延々と一人でしゃべってたんだぞ、あのじーさん」
「だから総隊長と呼べ!………まぁ、確かに長かったな」

話が長かったことにブツブツと文句を言う一護。そんな一護を苦笑しながらルキアは宥める。その時、ルキアはあることを思いついた。

「そうだ!一護、白玉あんみつを食べに行かないか?」
「白玉あんみつぅ〜?」
「ああ!疲れた時は甘いものを食べると元気が出ると言うではないか!!」
「それってお前が食べたいだけだろ?だって白玉………」
「その後は買い物にでも行くか?」
「お前…俺の話聞いてんのか?」
「さぁ!行くぞ!!」

一護をムシして先に歩き出すルキア。一護は溜息をつくと、先を行くルキアを小走りで追いかけた。



「お!ルキア!!それと一護じゃねぇか!?どうしてお前がここに来てんだ?」
「恋次。それに…兄様!!」

しばらく歩いていると、恋次と白哉に会った。先に声をかけたのは恋次だったが、ルキアは隣りにいた白哉を見た瞬間、嬉しそうに白哉に駆け寄った。

「兄様。ご無沙汰しております!お元気そうでなによりです」
「ああ。お前も元気そうだな。現世はどうだ?」
「はい。友人も一護の家族もよくしてくれて…」
「そうか…それは良かった」

嬉しそうに現世のことを話すルキアに、白哉は優しい微笑みを向けた。
そんな白哉を初めて見た一護は、同意を求めるように恋次を見た。ところが。
一番最初に話しかけたのに、思いっきりムシされている恋次は呆然と立ち尽くしていた。

(そういえばコイツ、ルキアのこと好きなんだったけ………)

一護は憐れみの目で恋次を見た。
ルキアと白哉は、昔のことが嘘のように現在とても仲が良い。見ようによっては恋人同士に見えるくらいに。
ルキアのことが好きな恋次には、この光景はかなり辛いだろうな…と一護は思った。
ちなみに一護もルキアと白哉の仲の良さには辛いものを感じていた。
一緒に過ごしているうちに、一護はルキアのことが好きになっていたのだ。だから、仲のいい二人を見ると嫉妬してしまう。そんな自分がイヤだった。

「…ご!一護!!」
「うわおぅ!!」

考え込んでいた一護の耳元で、ルキアが思いっきり叫ぶ。一護は思わず飛び跳ねてしまった。

「いきなり耳元で叫ぶんじゃねぇ!!驚いたじゃねぇか!!」
「何度呼んでも返事をしないから、耳元で呼んであげたのではないか!!」

そのままケンカに突入した二人を白哉はジッと見つめる。そして徐に口を開いた。

「お前たち…これからどこかに行くのではなかったのか?」

それを聞いて、ルキアはハッと顔をあげる。

「そうでした。ホレ、一護!早く行かないと白玉あんみつがなくなる!!」
「…あー、ハイハイ」
「では兄様、失礼します。恋次!兄様のこと頼んだぞ」

ルキアは頭を深々とさげると、一護を伴ってその場を去った。一護もサラリとだが白哉たちに頭を下げて行った。

「いいんスか?朽木隊長」
「何がだ?」

恋次が複雑そうな顔をしているのを白哉は不思議そうに見た。

「いや…ルキアを一護と二人きりにして、いいんですか?隊長は…ルキアのこと……」

そう言って口篭った恋次に、白哉はクスリと笑って言った。

「兄は何か誤解しているようだが、私はルキアのことは大切な妹としか思っていないし、ルキアは心に想う者がいる。それに………」

そこまで言って白哉は歩き始めた。急いで恋次は白哉に付いていく。
どっちにしても、俺は眼中にないってことか…と恋次が落ち込んでいる隣で、白哉はほんの少し微笑みながら思った。

―――後にも先にも、私が想う者はただ一人。緋真だけだと―――



「ここの白玉あんみつが美味しいのだ♪」
「ソーデスカ」

店に着いた途端、子どものようにはしゃぐルキアを可愛いと思いつつも、恥ずかしくて冷たい態度をとる一護。そんな一護の態度を気にすることなく、ルキアは白玉あんみつを注文する。

「貴様は何を頼む?一護」
「あー…俺は別にいい」
「何故だ?美味しいぞ、白玉あんみつ」
「俺はチョコレートパフェの方がいいな」
「ああ!アレも美味しいな!今度食べに行こう!!」

ウキウキと楽しそうに話すルキアを一護は微笑ましく思いながら見つめる。
そんな二人を遠くから見つめる者がいた。

「見て見て!あの一護が笑ってるわよ〜!!」
「乱菊さん…あんまりジロジロ見ないほうがいいんじゃないかなぁ………」
「雛森。今の松本に何を言ってもムダだ」
「朽木があんな風に笑うのも珍しいッスね」

少し離れた席で、日番谷・乱菊・雛森・檜佐木の四人が一護たちを見てヒソヒソと話していた。
といっても、面白そうに覗いているのは乱菊と檜佐木の二人で、雛森は困惑し、日番谷は興味なさげにお茶を飲んでいた。

「あの二人って、やっぱり付き合ってるのかしら?」
「付き合ってるにしては何だかぎこちない感じがしないッスか?友達以上恋人未満?」
「え?そうなのかなぁ…すごく仲がいい感じがするけど」
「なんだ、桃もやっぱり興味あるんじゃない?」
「や!ち、違いますよ!!」
「…………」

騒がしい三人に日番谷が静かにしろと注意しようとした時だった。

「あら?注文したのが来たみたいね」

と、乱菊が一護たちの方に目を向けたので、思わず全員一護たちの方を見た。

「白玉あんみつだ!!」
「相変わらず甘そうだな………」
「貴様もちょこれーとが好きではないか?あれも甘いぞ」
「アレとは甘さが違う」
「何だ其れは?」

ワケがわからないと言わんばかりに顔を顰めるルキアの顔が可笑しくて、一護はプッと笑った。

「何故笑う…?」
「いや………別に」

そう言いながらもさらに笑う一護を見て、ルキアはプクっと頬を膨らます。
めったに見られないルキアの可愛らしい姿に、一護はさらに笑ってしまった。

「わけもなく笑われると、かなり腹が立つのだが………」
「悪りぃ」

少々不機嫌になったルキアに一護は笑いすぎたかと思いながら、目の端に浮かんだ涙を拭いた。
拗ね気味に白玉を口に運ぶルキア。怒らせたか、と思いながら一護はルキアに声をかけた。

「白玉、美味しいか?」
「………ああ」
「そっか。良かったな」

一護があまりにも優しく微笑みかけるので、ルキアは頬を赤く染めた。
時々、自分に向かって優しく微笑んでくれる一護。他の者にはそんな表情を見せないことを知った時、ルキアは一護に淡い想いを抱くようになった。

「た…食べてみるか?」

照れ隠しの意味も込めて、ルキアは一護に向かって匙を向ける。
突然のルキアの行動に、一護は目を瞠った。しかしすぐにクスっと笑うと、「一口な」と言って匙を持つルキアの手を掴んであんみつを食べた。

「へぇ…意外と美味いな」
「そうだろう?貴様も頼めばよかったのに」

一護の行動に驚きながらも、美味しいと言われてルキアは微笑んだ。



「………何か」
「凄く甘いな、あの二人」
「憧れちゃいます…」
「全く…何をしているんだか、あの二人は」

一部始終を見ていた四人は思わず溜息をついた。溜息の内容は様々だが。
それでも仲良くあんみつを食べる二人を微笑ましい思いで見つめていた。



後日。
ソウル・ソサエティでの二人の様子を砕蜂から聞いた夜一から、浦原に話が行き、一護は二人から思いっきりからかわれてしまった。







素敵SSをくださったabcdefgさんへのお礼リクSSです。
リク内容は、ソウル・ソサエティで無自覚に仲良く過ごしている二人。それを目撃した死神たちの反応でした。
頼まれた死神は恋次と乱菊と修兵さん。しかし、予定にない方がたくさん出ています。
乱菊には日番谷だと思って出し、雛森も同じような理由で出しました。
しかし…白哉兄様に関しては私の趣味です!!
もっと言えば………

勝手に白緋にしています☆

ごめんなさい。abcdefgさん………(汗)
かなり自分の趣味を出した作品ですが、こんなのでよければ持ち帰っちゃってください。
お好きなように弄っちゃってくださいなvv
返品も可ですよ〜

こちらの作品はabcdefgさんのみお持ち帰りです。



up 07.06.29

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