「一護、頭が痛い………」
「は?」
朝。俺の部屋の押入れにいつの間にか居ついてしまった死神サマの第一声に、俺は眉間に皺を寄せた。
kiss me...
「風邪だな」
「………風邪?」
ルキアに居間から持ってきた体温計で計らせると、39度の高熱だった。しかも、先程から咳き込んでいる。
「とにかく今日は学校休め。親父がこの部屋に来ることはないだろうから、ベッドで寝てろ」
「しかし、虚が出たらどうするのだ?私がいないと死神化できないではないか………」
そう言いながら、ルキアは立ち上がって学校へ行く準備を始める。
「ったく!休めって言ってんだろ!?」
俺は無理矢理ルキアをベッドの上に座らせた。
「寝てろって言ってんだろ!無理して酷くなったらそっちの方が迷惑なんだよ。今日はコンを連れてくから虚が出ても大丈夫だ」
「しかし………」
それでもまだ言い募るルキア。俺は大きく溜息をついて言った。
「寝ないって言うんだったら、死神代行やめるぞ」
俺の言葉にルキアは「う…」と唸った後、すごすごと俺のベッドに寝転んだ。
「じゃあ大人しく寝てろよ!」
俺はコンをカバンの中に入れて(義魂丸状態にして)、睨みつけるように言った。ルキアは素直に頷いた。
でも―――
部屋から出て行く時、チラリと見たルキアの表情があまりにも淋しそうで、俺は何となく気になりながらも学校に行った。
「ああー!!今日は朽木さんがお休みだなんて、学校に来た意味がないじゃないかー!!」
「うるさいなぁ…静かにしてくださいよ、浅野さん」
「やめて!敬語はやめて!!」
ギャーギャーと騒ぐ啓吾。それに適当に答える水色。俺はそんな二人のを無視して1時間目の授業の準備を始めた。
「ねえ?朽木さん、風邪でもひいたの?一護」
「………なんで俺に聞くんだよ、水色」
「え?だって君たち仲いいからさ」
「仲良くねぇし、朽木が風邪かどうかなんて知らねぇよ」
俺は何も知らないふりをした。水色は勘がいいから、ここでムキになって否定すれば怪しまれると思ったからだ。
「ふ〜ん。そうなんだ」
水色は意外なほどあっさりとひいた。思わず俺は胸を撫で下ろす。しばらくして水色がボソリと呟いた。
「風邪の時ってさ、一人だと妙に淋しくない?」
1時間目の授業が始まったが、俺は違うことばかり考えていた。
部屋を出る時に見たルキアの顔。とても淋しそうな顔をしていた。水色が言ってたように、一人になるのが心細かったのだろうか?
こんなことなら、コンを置いていけばよかっただろうかと思ったが、アイツがいると休めないだろうと思った。
むしろ弱っているルキアに何か仕出かしそうだ。学校に連れてきておいて良かったかもしれない。
でも、今頃一人で淋しい思いをしているかと思うと………ああ!もういい!!
「スミマセン。俺、頭痛いんで帰ります」
いきなり立ち上がった俺に、クラス全員が注目する。俺はそれを気にせず帰る準備を始めた。
「頭が痛いって…メチャクチャ元気そうに見えるぞ、黒崎」
越智さんが呆れたような口調で俺に言ってきた。
「もう頭が痛くて死にそうです」
俺がそう言うと、越智さんはしばらく俺を見つめた後、溜息をついて言った。
「わかった。じゃあ早く家に帰って寝な。明日までに治してちゃんと学校に来いよ」
「へーい」
そう返事して、俺は教室を出た。出る前に目が合った水色が何だか面白そうに笑っていたけど、俺はそれをムシした。
学校を出てコンビニでのどごしのよさそうなものを買い、途中で浦原商店に寄った。ルキアは義骸だから、普通の風邪薬が効くのか聞くためだ。
すると浦原さんが「どうぞ」と言って薬をくれた。ついでに、今日虚が出たら自分たちが片付けておくとまで言ってくれた。
「サンキュー、浦原さん。じゃあ今日は虚退治頼むわ」
俺が素直に感謝を述べると、浦原さんは扇子を広げて楽しそうに笑いながら言った。
「風邪ひいて弱ってるからって、朽木サン襲っちゃダメですよ〜」
一瞬、ぶん殴ろうかと思ったが、今日は思いっきり世話になっているので、ここは堪えることにした。とりあえず、
「襲うわけねぇだろ!!」
と、否定だけはしておいた。
家に帰り着き、俺はすぐに自分の部屋に向かった。
一応起きていたら悪いな…と思い、自分の部屋だがノックをして「入るぞ」と一言言ってみた。
返事がないのでそっとドアを開けベッドへ行くと、ルキアは顔を真っ赤にしてつらそうに眠っていた。
起こさないようにそっと額を触ってみれば、朝よりも熱が上がってるんじゃないかと思うくらい熱かった。
つらいかもしれないが、起こして薬を飲ませようかと思った時、ルキアがうっすらと目を開けた。
「………一護?」
「あ…悪りぃ。起こしちまったか?」
俺が謝ると、ルキアはゆっくりと首を横に振って「大丈夫だ」と答えた。
とりあえず、浦原さんからもらった薬を飲ませようとカバンを探っていると、ルキアが話しかけてきた。
「一護。貴様、学校はどうした………?」
「ああ。早退してきた」
「………サボったのか?」
ルキアの発言に、俺は思わず眉間に皺を寄せた。
「あのなぁ。お前が心配で帰ったんだろうが。そういうこと言うか?普通」
俺がそう言うと、ルキアは目を大きく見開いて驚いていた。
「心配……してくれたのか?」
「そうだよ!悪りぃか!?」
ルキアがあまりにも意外そうに俺を見つめてくるので、思わず叫んでしまった。コイツの中では、俺は他人には興味がないように思われてるんだろう。
しかし、ルキアは意外な言葉を発した。
「………ありがとう」
ふわりと嬉しそうに微笑むルキア。俺は「おう」としか答えられなかった。ルキアの微笑みに見とれてしまったから。
「と、とりあえず浦原さんからもらった薬を飲め!!」
それだけ言って、俺はもらった薬をルキアに渡した。ルキアは訝しげに薬を見る。
「浦原から…?危ない薬ではなかろうな?もしくはかなりの値段の薬とか………?」
「俺も心配だったから一応聞いてみたけど、『いくらなんでも弱ってる人にそんなことしません』って言ってたから大丈夫だろ」
「それなら大丈夫だな………」
俺の言葉を聞いて安心したのか、ルキアはもらった薬を飲んだ。
「お前さ、朝から何も食べてないだろ?コレ食べろ」
俺はコンビニの袋からゼリーとスポーツドリンクを出してルキアに渡した。
「あ!薬飲む前に渡せばよかった!!薬って何も食べずに飲んだら胃に負担がかかるんだよな、確か」
ヤバイと焦る俺。そんな俺を見てルキアはクスクスと笑って言った。
「腹に入ってしまえば同じことだ。順番など関係ない。ではありがたくいただくぞ」
ルキアはゼリーを食べ始めた。確かにルキアの言うとおりだな…と思いながら、俺はルキアがゼリーを食べる様子を見つめた。
―――アレ………?―――
しばらくルキアを眺めているうちに、いつもとルキアの様子が違うことに気付いた。何が違うのだろうと俺はさらにルキアを見つめた。
熱があって体がだるいせいか元気がなく、きつそうな表情はどこか儚げだ。
いつもは気の強そうな瞳が、今日は熱のせいで潤んでいてどこか危うげな感じがする。
そして、やけに赤く色付いた唇が普段のルキアからは想像できないほどの色気を醸しだしている。
―――なんか、キスしたいな………―――
「へ?」
俺は思わず声を上げた。今、何を考えた?キスしたいなって………
「うわあぁぁぁぁぁぁ!!!」
「な、何だ一護!いきなり叫ぶな!!驚くではないか」
ルキアは非難するように俺を睨んだが、それどころじゃない!俺、今ルキアにキスしたいって思った!本気で思った!!
チラリとルキアを覗き見れば、やはり目が行く先はルキアの唇。ヤバイ。かなりヤバイ。
頭を抱えてしゃがみ込む俺。さっき浦原さんに言われたことが頭の中でグルグル回る。『風邪ひいて弱ってるからって、朽木サン襲っちゃダメですよ〜』が………
マズイ!このままじゃマジでルキアを襲いそうだ!と本当に思った。早く部屋を出たほうがいいかもしれない。
「俺がいないほうがお前もゆっくり眠れるよな!俺、居間に行くわ」
もっともらしい言い訳をして、俺は部屋を出ようとした。しかし。
「待って…一護………」
今まで聞いたことのないような甘い声で呼ばれて、俺はルキアの方を振り向いた。するとルキアは俺に手招きをしていた。
なんだかそれに逆らえなくて、俺はルキアの元に行きベッドの横に座った。
「なんだよ」
平静を装ってルキアに話しかける。するとルキアが俺に向かって手を伸ばし、そして………
「行かないで…一人にしないで。一護………」
そう言って俺にキスしてきた。
その瞬間、俺の中で何かが切れた。
縋るようにキスしてきたルキアを抱きしめ、自分の方から深くキスをした。
「ん……………」
時々唇を離す時に漏れるルキアの甘い喘ぎ声に頭がクラクラしてきて、ルキアを抱きしめる腕に力をこめる。
「いち……ご」
極上の甘い声で俺の名前を呼ぶルキア。熱のせいでほんのり赤く染まった頬と潤んだ瞳で俺を見つめてくる。
そのどれもが俺を誘っているようにしかみえない。
俺がルキアのパジャマに手をかけた時だった。
「一護ォ。帰ってんのか〜?」
トントンと階段を登ってくる足音と共に、親父の声が聞こえた。俺とルキアはものすごい勢いで離れた。
「とりあえず布団かぶって隠れてろ!!」
ルキアはすぐに布団をかぶって隠れた。俺は親父が部屋に来る前に先に部屋を出た。
「なんだよ!くそ親父!!」
「なんだよって、お前の部屋から声がするから帰ってきたのかと思ってな。学校はどうした?」
焦って叫び気味の俺に対し、いたって冷静な親父。当たり前だ。親父はここにルキアがいるなんて知らないんだからな。
「頭が痛くて早退したんだよ」
「そうか。薬いるか?」
あっさりとした親父の反応に驚いて、俺は数秒たってやっと「いらねぇ」とだけ言った。
「わかった。じゃあちゃんと寝とけよ〜」
そう言って、親父は手をヒラヒラさせながら階段を降りていった。
「行ったのか?」
安堵の溜息をついて部屋に戻れば、ルキアが布団から顔を出して聞いてくる。
ルキアを見た瞬間、さっきの自分の行動を思い出して俺は顔が熱くなった。それはルキアも同じだったようで、顔を真っ赤にして俯いている。
妙な沈黙が俺たちの間に流れた。
何か話さなくてはと思っていると、ルキアの方から話しかけてきた。
「あの………ありがとう」
「へ?何が?」
なぜお礼を言われるのかわからなくて、俺はマヌケな声を上げた。するとルキアは嬉しそうに笑って言った。
「私のために学校を早退して戻ってきてくれて…本当に嬉しかった」
「そうか?なら…良かった」
そんなふうに言われるとなんだか恥ずかしくて、俺はルキアから目をそらす。
するとルキアがボソリと呟いた。
「だから貴様が部屋を出て行くと聞いた時、淋しくて思わず引き止めてしまった。そのうえ………本当にすまない」
悲しそうに俯くルキアに驚いて俺は焦ってしまった。
「いや。どう考えてもあれは俺が悪いだろう。病人のお前に無理矢理………」
「先にしたのは私だから、私が悪い」
そう言ってルキアはさらに俯く。あまりのルキアの落ち込みように、俺はさらに焦ったが………
「でも、嬉しかった。貴様からキスされて」
ルキアは微笑みながら言った。とても幸せそうに。
そんなルキアを見ていたら、俺もちゃんと言わなくてはと思った。
「俺もお前からキスされて嬉しかった。だからその…お返しをしたというかなんというか………」
そう告げた俺をルキアは驚いたように見つめていた。だから俺は続けて言った。
「俺、お前のこと好きみたいだからさ。早くよくなれよ」
俺は痛くない程度の力でルキアの腕を引っ張って、唇に軽く触れるだけのキスをした。
ルキアは驚いたのかしばらくボーっとしていたが、すぐに俺に微笑みかけた。
「私も貴様のことが好きみたいだ」
ルキアもまた、俺の唇に軽く触れるだけのキスをした。
「こんなにキスをしていたら、貴様に風邪が移ってしまうな」
そう言って俺から離れようとするルキアを俺は引き止める。
「今さら遅いだろ。これだけくっついてたら離れても意味ないだろ」
俺の言葉を聞いて、ルキアは「う…」と項垂れる。そんなルキアを見て俺はニヤリと笑った。
「まぁこれで俺が風邪ひいたら、今度はお前が看病してくれよな?」
ルキアは目をパチパチさせて俺を見つめていたが、すぐに笑顔になった。
「わかった。今度は私が看病してやるよ」
部屋にクスクスと俺たちの笑い声が響き渡った。
管理人、英語が苦手ですが英文タイトルにしてみました。
といっても、超簡単英文ですが。パパッと浮かんだんですよ、駄文製作中に。
こちらの作品は私のイチルキ+雨織の神、椿 良様の友達記念リクです。
我が神からのリクは「軽くでいいからイチャイチャ…キス」でした。
なかなかイチャイチャまでの流れが決まらず、友人のアドバイスでやっと完成。
考えた他の設定は、次の制作の時に使おうと思います。もったいないので。
考えた内容は、二人で日直と図書館でお勉強です。図書館はリョ桜に使います←え?
かつてないほど甘いうえに、私にしては珍しく微エロでございます。
誰が何と言おうと、私の中ではあれは微エロです!物足りない方もいらっしゃると思いますが、
これ以上は私には書けません!!!申し訳ありません………(大汗)
良ちゃん、こんなのでよろしければお持ち帰りください。返品可です。
こちらの作品は良ちゃんのみお持ち帰りです。
up 07.05.12
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