誕生日を祝ってもらって嬉しいと思ったのは、恋次たちと一緒に過ごしていたあの日々だけ。
朽木家に養女として迎えられてからは、祝ってもらっても一度も嬉しいと思ったことはない。


愛しさがあふれてくる



冬休みが明け、もうすぐテスト。一護とルキアは一緒にテスト勉強をしていた。
ずっと下を向いていたせいか、背中が痛くなった。ルキアは背伸びでもしようかとペンを置いた。

「あ………」
 
ふと見上げた先にあったカレンダーを見てルキアは呟いた。

「どうした?」
「いや…なんでもない。気にするな」

ルキアの呟きに気付いた一護が声をかける。それにルキアは曖昧に返事をした。
一護は首を捻りながら再び参考書に目を向けた。そんな一護にうっすらと笑みを浮かべながら、ルキアはもう一度カレンダーを見た。

(もうすぐ14日か…すっかり忘れていたな)

現世では丁度祝日。成人の日。14日はルキアの誕生日だった。一護のサポートや学校生活で、ルキアはすっかり誕生日のことを忘れていた。
そういえば、年始の挨拶にソウル・ソサエティに帰った時に白哉に祝いの席について聞かれたことを思い出す。
今年は現世に滞在してるからいいと断った。というより、祝われるのが嫌だった。
白哉はともかく、朽木の家の者が自分の誕生日を祝ってくれているとは思えなかったから。
死神になってから、浮竹たちにはお祝いの品を貰ってはいたが宴会などをしたことはない。
恋次にいたっては、ルキアが朽木家に養女に行ってからは疎遠になってしまったので、祝ってもらったのは一緒に過ごしていた時だけ。

(寂しい誕生日を送っているな…私は………)

自嘲するようにルキアは笑った。



14日。ルキアの誕生日当日。
朝からコンコンと窓を叩く音がして、一護は目を覚ました。
何だ?と思いながらカーテンを開けると、窓の外に恋次がいた。一護は眉間に皺を寄せて窓を開ける。

「こんな朝早くに何の用だよ………」
「悪ぃな。さすがに寝起きのルキアの所に行ったって隊長に知られたら俺が殺されるからさ。お前に渡しておこうと思って」
「は?」
「これが朽木隊長でこれが浮竹隊長で…他にもいろんな人から………」
「ちょっとまて。これは一体何なんだ!?」

どんどん出てくる箱の数々に一護は驚く。だから思わず叫んでしまった。
すると恋次は目を丸くして答えた。

「今日はルキアの誕生日だろ?これは皆からの祝いの品だ」

それを聞いて一護はさらに驚いた。



「ルキア、ちょっと散歩に行かねぇか?テスト勉強でずっと家に篭ってたからさ。気晴らしに」
「そうだな。偶には外に出ないとな」

一護の誘いにルキアは頷く。出掛ける二人を遊子と夏梨が「いってらっしゃい」と玄関まで見送った。

「どこに行くのだ?散歩だから河原にでも行くのか?」
「とりあえず………商店街」
「商店街?何か買いたいものでもあるのか?」
「んー…まぁ、そんなとこか」

はっきりしない一護の返事を不思議に思いながら、ルキアは一護の後について行った。



成人の日だからか、商店街はたくさんの人で溢れかえっていた。その中には綺麗な着物を着た女性がたくさんいた。
ルキアは一歩前を歩く一護の服の裾を引っ張った。

「一護。成人の日の時は女子は着物を着るのか?」
「んー…さぁ?人それぞれじゃね?」

一護は適当に答えると、キョロキョロと辺りを見回す。先程からずっとそれを続けている一護にルキアは呆れた。

(自分から散歩に誘っておいて…誰かと待ち合わせでもしておるのか?)

そんなふうに思っていた時、あるものが目に入ってルキアは立ち止まった。
突然立ち止まったルキアに気付いた一護は、振り返ってルキアが見ている方に自分も目を向ける。そこにあったものを見て、思わず笑った。

「何だ?お前、あれが欲しいのかよ?」
「……っ違う!!そんなこと思ってないぞ!!」

顔を真っ赤にして否定するルキア。一護はさらにククク…と笑った。
ルキアの視線の先にあったのはUFOキャッチャー。中に入っているのはウサギのぬいぐるみ。

「〜〜〜っ!!笑うな!失礼だぞ!!」
「ハハ……悪ぃ」

更に顔を真っ赤にして一護に怒鳴りつけるルキア。一護は目に涙を浮かべながら謝ると、そのままUFOキャッチャーに向かって歩き始めた。
首を傾げ、一護について行くルキア。すると一護はお金を入れてUFOキャッチャーを始めた。
UFOキャッチャーを初めて見るルキアは、ワケがわからずただ一護の様子をジッと見つめる。
一護は上手に中に入っていたウサギのぬいぐるみをとる。思わずルキアは「すごい」と呟いた。しかし………

「あ!」

せっかくとったぬいぐるみがポトンと下に落ちる。かわいいウサギのぬいぐるみだったので、ルキアは落ち込んでしまった。ところが。

「ホラ」
「へ?……ってアレ?これは………」

一護の声と同時に突然目の前に現れた白い物体。ビックリして顔をあげると、さっき落ちたウサギのぬいぐるみだった。

「貴様。さっきこれをとったと思ったら、最後に落としてしまったではないか。何故それがここにあるのだ?」
「落とした…?ああ。これはな、一度とってしまえばこっちのもんなんだよ。そういうゲーム。落ちたのは取り出し口だから」

一護もどうやって説明していいかわからず簡単にすませる。いまいち意味がわからなかったようで、ルキアは眉間に皺を寄せていた。
一護は苦笑しなががらさらにぬいぐるみをルキアに向かって差し出す。

「とりあえず、受け取れ。安いけど………俺からの誕生日プレゼントだ」
「………え?何で………」

知っているのか…とルキアは目で問う。
一護はそんなルキアの額を軽く指で押す。そして口を開いた。

「朝、恋次が俺の部屋に来て教えてくれた。ちなみに俺の部屋には死神たちからのプレゼントで溢れかえってるぞ」
「恋次が………そうか。しかし、何故恋次が来てプレゼントを置いていったことを教えてくれなかったのだ?」
「それは………家に帰ったらわかる」

ルキアが尋ねると、一護はイタズラを思いついた子どものように笑った。



とにかく帰ろうと一護が言うので、ルキアは家に帰ることにした。さっき一護がくれたウサギのぬいぐるみを抱きしめて。
家に着くと、一護が先に家に入った。その後にルキアが家に入った瞬間………

「Happy Birthday!!」

掛け声と共にパンパンと音が鳴り響く。驚きのあまり、ルキアは目を瞑った。
音が鳴り止んだので恐る恐る目を開ける。そして目の前にいる人たちを見てルキアは更に驚いた。
一護と黒崎家の人たち以外に織姫と石田、茶度、たつき、啓吾、水色がいたのだ。皆ルキアを見てニコニコと微笑んでいる。
その中で織姫がルキアに抱きついてきた。

「朽木さん。お誕生日おめでとう!黒崎くんに教えてもらって皆でお祝いに来たの!!」

織姫の言葉を聞いて、ルキアは一護を見た。一護はほんの少し頬を染めながら言った。

「誕生日は皆で祝わないとな」

その後いろんな人から祝いの言葉を貰い、ルキアは何ともいえない幸せを感じた。



「なんだかたくさん貰ってしまって申し訳ないくらいだ………」
「いいんじゃね?誕生日なんだし」

皆でパーティーをした後、ルキアは一護の部屋に置いてある恋次たちからのプレゼントを取りに来た。
その量の多さにルキア自身驚く。こんなにたくさん貰ったのは初めてかもしれない。

「井上たちからは何を貰ったんだ」
「ん?ああ…首飾りだ」
「………ネックレスって言えよ。へぇ。綺麗じゃん」

ネックレスが入った箱を見て一護は呟く。
織姫たちは皆でお金を出し合ってプレゼントを買った。女子二人が選んだネックレスは可愛い花の形をしたデザインで、ルキアに似合っていた。
ルキアは嬉しそうにネックレスを眺める。その間、一護は死神たちのプレゼントを見ていた。

「浮竹さんや乱菊さんからも来てるな。やちるも…って金平糖かよ」

苦笑しながら金平糖が入った袋を持ち上げた時、ふと小さな箱が目に入った。

「何だこれ?おい、ルキア。誰からだ?」
「ちょっと待て」

ルキアが貰ったものなので自分が開けるわけにはいかない。一護はルキアに箱を手渡した。
箱を開けると中から出てきたのは綺麗な細工が施された櫛と手紙。ルキアはその手紙を読む。最後まで読むと、ルキアはポロポロと大粒の涙を零しはじめた。

「な!どうしたんだよ!?」
「姉様が………」
「は?」

突然泣き出したルキアに驚いて焦る一護。しかしルキアは涙を流しながらも嬉しそうに微笑んで言った。

「昔…姉様が兄様に買ってもらった櫛だそうだ。宝物だと大切に使っていたらしい」

きっとルキアが使えば緋真も喜ぶと思うから…と手紙には書いてあった。
二人から贈り物を貰ったようで嬉しくなる。ルキアはギュッと櫛を握り締めた。

「よかったな」

一護がポンポンとルキアの頭を優しく叩く。しかしその後、渋い顔をして言った。

「なんか…俺のプレゼントが一番安っぽいな。ゲーセンの景品………」
「へ?ああ、そんなことないぞ。貴様がくれたプレゼントが一番嬉しい」
「はぁ?ゲーセンだぞ?」
「え?だって………」

意外だと言わんばかりの顔で驚く一護にルキアは微笑む。

「世界で一番大好きな貴様から貰ったのだから」

そう言って、ルキアは一護にキスをした。



ありがとう。あなたのおかげで初めて素敵な誕生日を迎えることができたよ。







Happy Birthday To Rukia!!

前回の一護の誕生日よりは甘くなってるとは思うのですが…どこか切ないのは気のせいではない。
まぁ…今回はルキアがキスしてるからいいや。←なんて適当な;;;
ん?そういえば付き合ってない設定なのにキスしてる…まぁいいか。←適当すぎる;;;
兄様からのプレゼントが浮かばず、以前書いたネタを使いまわしてたりしますvv
大体、一護のプレゼントも某お方のアドバイスで決定してるし。
UFOキャッチャーで取ったウサギのぬいぐるみ。
グリップテープに続く色気のないプレゼントです(爆)

それにしても間に合って良かったです!!
お花ちゃんが同じ誕生日なのは本当に痛いです;;;

お誕生日おめでとう!ルキア☆



up 08.01.14

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