今年は初めて、二人きりで誕生日を過ごすことになった。


嬉しいよ



ルキアはグレーのワンピースを着た。
少し畏まった所に着ていのに丁度いいと、一ヶ月ほど前に遊子と夏梨と三人で買い物に行った時に二人から勧められて買ったものだった。
今思えば、その時から計画されていたのかもしれないとルキアは考えたが、それについては深く追求しなかった。
鏡に向かったルキアはポーチから口紅を出して、そっと微笑んだ。
 
『お誕生日おめでとう。朽木さん』

今朝、駅で織姫がこっそりルキアに渡した誕生日のプレゼントは、薄いピンク色した口紅だった。

『石田くんと一緒に選んだんだよ。朽木さんに絶対似合うと思って。黒崎くんとデートする時につけてね』

一護に聞こえないように耳元でそう伝えた織姫。だからルキアもそっと囁いた。今日、早速デートをするのだと。
すると織姫は嬉しそうに手を叩いて喜んだ。絶対につけてね、と言って。
ルキアは唇にそっと口紅をつける。ほのかにピンク色に染まった自分の唇を見て、なんとなく恥ずかしくなった。

(そういえば、現世でもソウル・ソサエティでもあまり化粧をしないからな)

死神の時は化粧をしても意味はないし、大学には勉強に行ってるだけだから化粧なんてしなくても…というのがルキアの考えだった。
だから慣れない口紅をつけて、おかしくないだろうかとルキアは不安になった。その時だった。

「おい。準備できたか?」

ノックをした一護がドアの向こうからルキアに声をかけてきた。
ルキアは急いで立ち上がり、バッグを持って駆け足でドアに向かった。

「ああ…できたぞ。遅くなってすまないな」

ドアを開けて顔を出したルキア。すると、ルキアの顔を見た一護が目を瞠った。

「どうした?一護」
「あ…いや。それより、予約してるからそろそろ家を出ないと」
「そうか。では行こうか」

ルキアはコートを羽織り、首にストールを巻く。一護はルキアに気付かれないようにそっと溜息をついた。



二人で駅に向かって歩く。今日、一護が予約したレストランは中心部にあるので、電車を利用しなければならなかった。
家を出てからずっと、二人は会話をしていなかった。一護がうわの空だったからだ。
最初は黙っていたルキアだったが、居心地が悪くなってきて一護に声をかけてみた。

「今日のレストランはどこにあるのだ?」
「んー…」
「シャンパンとやらは飲めるのだろうな?」
「んー…」
「帰りに遊子たちにケーキでも買って帰ろうか?」
「んー…」
「………黒崎一護のバーカ」
「んー…」

ルキアの眉間に皺が寄った。せっかくの誕生日だというのに、一護は何も聞いていない。沸々と怒りが沸いてくる。
ルキアは一護の腕を掴み、自分のほうにグイっと引き寄せた。
引き寄せられた一護はバランスを崩してルキアの方に倒れこむ。そこへ………

「この…大莫迦者ーーーー!!!」
「うわあ!!!」

ルキアが耳元で叫び、驚いた一護は飛び上がった。

「いきなり耳元で叫ぶんじゃ………」

目に涙を溜めてルキアを見た一護は、ルキアが物凄い形相で睨んでいるので、それ以上何も言えなくなってしまった。
睨み合うこと数秒。先に口を開いたのは居た堪れなくなった一護の方だった。

「えっと…お前、何…怒ってんの?」
「何って。貴様、自覚はないのか!?」

ギッと更に睨みつけるルキア。一護は柄にもなくビクンと体を跳ね上げた。
ルキアは握っていた一護の腕に更に力を込めると、先程とは違い、小さな声で話し始めた。

「家を出てからずっと黙ってるし、話しかけてもちゃんと答えてくれないし」
「悪い…」
「……なのに」
「へ?」

よく聞き取れなくて、一護は首を傾げる。
すると、ルキアがほんの少し目に涙を溜めて一護を見た。

「誕生日なのに。二人きりなのに…こんなの面白くない」

そう言って俯いた。小さな肩はほんの少し震えていて、それを見た一護は情けなくなった。大切な日なのに、悲しませてしまった。
一護はそっとルキアを抱き寄せた。

「ごめん。せっかくの誕生日なのにつまらない思いさせて」
「…………」
「その、なんていうか、恥ずかしかったというか」
「…恥ずかしい?」

俯いていたルキアが不思議そうに顔をあげる。その瞬間、目が合った一護はパッと顔をそらす。

「その、あの、アレだ」
「だから何なのだ?はっきり言え」
「あーうー…」

しばらく唸っていた一護だったが、観念したのかボソリと呟いた。

「その…お前が綺麗だったからさ。見惚れたっていうか…その口紅、似合ってる」

キョトンと一護を見つめるルキア。一護の方は恥ずかしくて顔を真っ赤に染める。
そんな一護を見て、ルキアはクスクスと笑った。
自分に「綺麗だ」と「似合うよ」という言葉が言えなくて悩んでいた一護が可愛くてしかたなかった。
慣れない口紅をつけて、「綺麗だ」と「似合うよ」と言われて嬉しかった。
明日、織姫と石田にお礼を言わなくてはとルキアは思った。

「一護」
「何だよ」

恥ずかしそうにしながらも、ルキアに呼ばれて返事をする一護。
ルキアはクイっと一護の腕を引っ張って耳元で囁く。

「ありがとう。嬉しいよ」

ルキアの言葉に、一護もまた嬉しそうに微笑んだ。



「早くレストランに行って、シャンパンで乾杯したいな」
「お前…やけにシャンパンにこだわるな」
「だって美味しいと聞いたのだが」
「誰に?」
「親父殿だ。高いのほど美味しいらしいぞ」
「………安いのでお願いします」







Happy Birthday To Rukia!!

久しぶりの捏造シリーズですww お誕生日でやってみました。
今置いてある、拍手小咄と何気に繋がってますが、これだけでも読めます☆
「綺麗だよ」ってなかなか言えない初心な一護の話が書きたくて作った駄文です(笑)
誕生日って感じがしませんけどNE☆プレゼント出てないしNE☆
プレゼントは皆様の想像におまかせします!!
とりあえず一護はこの数ヶ月、バイト頑張ったことと思います(´V`)

とりあえずイチルキは何とか間に合いました………
もう一人のお花ちゃん間に合うのかしら;;;

それでは。お誕生日おめでとう!ルキア☆



up 09.01.14

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