甘いお菓子、それは君
「いっちぐぉぉぉー!久しぶりぃぃぃー!!」
インターフォンを鳴らして数秒後、いきなりドアが開いたと同時に飛び掛ってきた人物を、一護は条件反射でひょいとかわした。
すると、バターンと大きな音をたてて飛び掛ってきた人物―啓吾―がその場に倒れこんだ。
「ぬおぉぉぉぉ………」
倒れた啓吾はその場で悶える。そんな啓吾が倒れる原因となった一護と、一護と一緒に啓吾の家を訪れたルキアは何とも言えない表情をした。
「大丈夫…?浅野君?」
ルキアが優しく声をかける。すると倒れていた啓吾は勢いよく立ち上がり、ルキアの両手をガシッと掴んだ。
「心配してくれてありがとう!朽木さん!!やっぱりあなたは俺の女神……がはぁっ!!」
「何勝手に触ってんだよ」
体をクネクネさせてルキアに迫っていた啓吾の後頭部を一護は思いっきり殴り飛ばした。
「うおぉぉぉ………」
「一護…いくらなんでもやりすぎではないか?」
「いいんだよ。それより入ろう」
またも悶える啓吾をムシして、一護はルキアの肩を抱いて家の中に入った。
「久しぶり、一護、朽木さん。相変わらずラブラブだね」
「………ム」
「遅い!一護」
リビングに入ると、水色・チャド・たつきがソファに座って宴会を始めていた。チラリとキッチンに目を向けると、石田と織姫が何かを作っている。
石田はともかく、織姫の料理は…と思っていると、織姫が一護たちに気付いて微笑む。
「黒崎くん、朽木さん!遅かったね〜」
「どうせ、黒崎の準備が遅かったんだろう?朽木さんはちゃんとしているからね」
「うるせぇよ!」
一護は石田に向かって叫んだ後、ルキアと一緒にリビングに向かった。ちなみにルキアと織姫は一護たちの様子をクスクスと楽しそうに眺めていた。
「久しぶりだな。たつき、水色」
一護はチャドの横に座ってたつきたちに言った。たつきたちも「久しぶり」と答える。
高校を卒業して、たつきたちとは学校がバラバラになった。時々こうして会ってはいるが、なかなか会えるものでもない。
チャドに関しては、学校は別だが虚関係でよく会っているのでたつきたち程久しぶりという感じではない。
「それにしても…お前らマジでそんな格好して飲んでるのかよ?」
「一護たちの分も用意してるからねvvちゃんと着替えてよ?」
「私たちの分もあるのですか?」
何とも言えない表情で三人を見た一護に水色はニコニコと答える。その水色の答えにルキアは嬉しそうに反応する。
「せっかくのハロウィンパーティーなんだから、楽しまなくちゃね!」
そう言って、水色は一護とルキアに衣装を渡した。
今日は10月31日。昨日の夜、啓吾から「明日ウチでハロウィンパーティーするから朽木さんと来てねvv」と言われた。
どうせただの飲み会だろうと一護は思っていたが、皆が仮装しているので驚いた。ルキアは目をキラキラさせて楽しそうにしているが。
チャドはフランケン。たつきは魔女。水色は狼男の格好をしている。水色はいろんな意味で狼男が似合っていると一護は思った。
玄関で一護たちを出迎えた啓吾はジャックオランタンを頭に被っていた。だから先程一護は思いっきり啓吾の頭を殴ったのだ。
ちなみに仲良く料理をしている石田と織姫は、やはり仲良く頭や手に包帯を巻いている。多分ミイラ男(女)なのだろう。
「一護!早く着替えよう!!」
「あ…ああ」
ルキアに急かされて、一護は着替えることにした。
「うわぁ…黒崎くん、似合ってるねぇ」
「ホント。似合ってるわ、一護」
出来上がった料理をテーブルの上に置いていた織姫が着替えた一護に気付いて感想を述べる。それを聞いてたつきも似合うと感心していた。
「あんまり嬉しくないんだけど」
眉間に皺を寄せて言った一護は吸血鬼の格好をしていた。襟元にはフリルやらリボンが付いているのに、それが似合っている。実は今回の衣装は石田と織姫が作ったもの。
皆よく似合っているので織姫は思わず微笑む。その時。
「井上…コレはこんな感じでいいのか?」
そっとリビングの扉が開き、おそるおそると言った感じで入ってきた人物を見て、その場にいたものは全員言葉を失った。
黒いレースをあしらったミニのワンピースに、背中に悪魔の羽をつけたルキアが入ってきたのだ。
「わぁ!良く似合ってるよ!朽木さんvv」
「僕と井上さんがデザインしたんだからね。似合って当然だよ」
「よく似合ってる、朽木さん」
「一護の彼女にしとくのはもったいないわね」
「ム………」
思い思いに賛辞を述べる友人たち。そんな中、ルキアを見て固まっていた啓吾は突然立ち上がってルキアの手を掴む。
「朽木さん!素敵すぎます!!どうか僕と付き合って………がはぁっ!!」
「ヒトの彼女を勝手に口説いてんじゃねぇよ」
「一護!?さっきからやり過ぎだ!!」
またしてもルキアを口説こうとした啓吾を一護は思いっきり殴る。そんな一護をルキアは慌てて諌めた。
しかし一護はルキアの言うことを聞かず、そのままルキアを連れてソファに座る。そこには殴られて悶える啓吾だけが残された。
「相変わらずバカだね、啓吾は」
「学習能力のないヤツ………」
「………ム」
水色、たつき、チャドの三人は哀れみのような呆れたような目付きで悶える啓吾を見つめていた。
パーティーとはいえ、今日は平日。明日は学校がある。
一護は明日のことを考えてアルコールは控えていたが、周りは思いっきり飲んでいた。と言っても、飲んでるのは啓吾と水色の二人だが。
石田と織姫は先程から周囲のことも考えずに二人の世界を作っている。
一護は大学でもそんな二人に付きあわされているし、ルキアはプライベートの他にソウル・ソサエティ関係で二人に会っているので免疫がある。チャドも同じ。
たつきも織姫の親友からだろうか、仲のいい二人を呆れたように見ながらも慣れているようだった。水色は別にどうでもいいらしい。無反応だった。
でも啓吾にはそれはショックだったようで、先程から泣きながらビールを飲んでいた。
そんな時。ルキアがそっと立ち上がってベランダに出た。
虚か?と一護は思ったが、そうではなさそうだったのでお茶を飲む。すぐに戻ってくるだろうと思って。
ところがいつまで経ってもルキアは戻ってこない。一護もそっと立ち上がってベランダに出た。
ベランダでルキアは外の景色を眺めていた。その横顔はあまりにも綺麗で一護は見惚れてしまった。
すると気配を感じたのかルキアは振り向き、一護を見て花が綻ぶように微笑んだ。
「どうした?一護」
「………いや、お前なかなか戻ってこないから。どうしたのかと思ってな」
「ああ。新鮮な空気を吸いたくてな。すぐに戻るつもりだったんだが、夜景が綺麗で………」
それだけ言ってルキアは再び外に目を向ける。一護も同じように夜景に目を向けた。
「ところでハロウィンと言うのはこんな仮装をして飲み会をする行事なのか?」
「は?」
声をあげて驚く一護。そして隣にいる自分の彼女が死神であったことを思い出す。
「違う。コレは外国の子どもの祭。まぁ大人もやるんだろうけど、そこまでは俺も知らねぇ」
「仮装は絶対するのか?」
「みたいだぞ。オバケの格好して『trick or treat?』って聞くんだよ。『お菓子くれないとイタズラする』みたいな意味だったかな?」
「それで今日、たくさんお菓子があったのか?」
「一応ハロウィンだからな。置いといたんだろ。まぁ、殆ど飲み会だったけどな」
「成程………」
一護の説明を聞いて、ルキアは口元に手をあててフムフムと考える。一護は何だ?と思いながら再び外に目を向けた。
するとルキアはいいことを思いついたのか、ニンマリと笑って一護の服を引っ張った。
「何だ?ルキア」
「一護。trick or treat?」
「へ?」
「trick or treat?ホレ、お菓子くれないとイタズラするぞ」
「はぁ!?」
いきなりのことに戸惑う一護。そんな一護を見てルキアはニヤリと笑って一護の服をさらに引っ張った。
「答えないのなら、イタズラするぞ?」
ルキアはそのままグイっと一護を引っ張って、その頬に軽くキスをした。
目を瞠る一護。ルキアは楽しそうに一護を見つめる。そして………
「さっきは言えなかったが、その衣装似合っておるぞ」
と言って微笑んだ。
反則だと一護は思った。イタズラと言ってキスされたことも衣装が似合うと言われたことも。
キスのことはともかく、自分も似合っていると言いたかったから、先を越されてなんだか悔しい。だったら………
「じゃあルキア。俺もtrick or treat?」
「ん?ああ…先程井上から貰ったチョコがあるぞ。食べるか?」
「いや。もっと甘いお菓子があるからそっちを貰う」
「甘いお菓子?」
「ああ」
一護はルキアの顎を軽く掴んで上を向かせ、そのまま唇にキスをした。
いきなりのことに硬直してしまったルキア。それを感じながら一護はニヤリと笑う。
唇を離した後も硬直しているルキアに一護はニッコリ微笑むと、ルキアの耳元で囁いた。
「甘いお菓子をどうもありがとう」
それを聞いた瞬間、ルキアは顔を真っ赤にして一護を睨みつける。そんな顔してもカワイイだけだから…と思いながら一護は口を開いた。
「俺も言えなかったけど、その格好、似合ってる」
「え………?あ、ありがとう………」
そんなことを言われるとは思わなかったルキアは拍子抜けして素直に礼を言う。
一護はニッコリ微笑むと、再びルキアの耳元で囁いた。
「今すぐここで襲いたいくらいカワイイ」
ルキアはここがアパートのベランダということを忘れて思いっきり「一護ー!!」と叫んだ。
君のかわいいイタズラも嬉しかったけど、甘いお菓子のような君とのキスの方が俺は楽しかったよ。
一護がエロ魔人だ!!逃げて!ルキア!!
イチルキハロウィンです。別に捏造じゃなくてもいいんじゃ…というツッコミはナシでお願いします☆
最初はルキア優勢のようでしたが、最後は一護が勝っちゃいました(爆)
最近、ウチの殿方たちは強い傾向にあるような気がします。
このお話も一応、ツンデレのへタレな一護にする予定だったのですが;;;
まぁ、最初の方は嫉妬してたし、ルキアにイタズラされて驚いてたからいいや←開き直り
実はこのお話は予定外で、本当は違うお話を制作していました。
そちらは次回に回しますねvv
こちらはリョ桜と違ってハロウィンが終わっても掲載します!!
up 07.10.12
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