今はただの口約束かもしれないけれど。いつか、必ず………


君と一緒に過ごす幸せ



いつもの光景が変わったのは、一護の隣に座っているルキアが珍しいものをバッグの中から取り出した時だった。

「………ルキア」
「何だ?」
「ソレ…どうした?」
「ソレ?」
「ソレだ。その今………」

口に出すのが恥ずかしくて口篭っていると、ルキアは首を傾げ「どうしたのだ?」と尋ねてくる。
しばらく「あー…うー」と唸っていた一護だったが、ジッと不思議そうに見つめてくるルキアに観念したのか、ボソリと小さな声で尋ねた。

「その本…どうしたんだよ…?」
「本ってコレのことか?」

ルキアは持っていた本に目を向ける。ルキアが持っていた本。それはいわゆる結婚情報誌というヤツだった。

「あぁ。これはだな………」



その日。学校に着くと何人かが集まって楽しそうに騒いでいた。その中心にはルキアと仲の良い友人がいた。
どうしたのだろうと思いながら空いてる席に座ると、ルキアに気付いた友人が手を大きく振ってルキアを呼んだ。

「おはよう!ルキアちゃん!!ねぇねぇ、ちょっとこっち来て!!」
「おはようございます」

朝から元気いっぱいの友人にニッコリと笑いかけ、ルキアは彼女の元に向かう。

「見て見て!!綺麗でしょう?」

やってきたルキアに友人は持っていたものを見せる。それは………

「えっと…これって結婚式の……」
「そう!結婚情報誌!この前結婚したお姉ちゃんに貰ったの」
「そうなんですか。綺麗ですね」

雑誌を見て微笑むルキアを見て友人は考え込み、そしてニヤリと笑った。パタンと雑誌を閉じ、それをルキアに向ける。

「あげる」
「へ?」

友人の突然の行動に、ルキアだけでなく一緒に雑誌を見ていた数名も声をあげた。
しかし友人はそれを気にすることなく、むしろ楽しそうに笑いながら言った。

「だってこの中で一番結婚しそうなのってルキアちゃんでしょ?だって彼氏と同棲してるんだもん」



「…と言われてな。同棲じゃなく同居だって説明するのに時間がかかるわ、貴様に会わせろと言われるわ……大変だったんだぞ」
「そうか…でもなんでその本持って帰ったんだよ?」
「んー…なんかムリヤリ押し付けられた感じだな。まぁ、綺麗なものを見るのは楽しいからな。有難く頂いておいた」

ルキアはニッコリと笑って雑誌に目を向けた。一護はルキアに気付かれないようにそっと溜息をついた。
結婚情報誌を読むルキアを見て、まさか…とドキドキしてしまった自分が恥ずかしくて。

「それにしても、このウェディングドレスというのは綺麗だな。ワンピースみたいだ」
「……ワンピースとはちょっと違うと思うけどな」

目をキラキラと輝かせて雑誌の中のドレスを見つめるルキア。一護はルキアの横からチラッと雑誌を見た。
その写真の中にあったドレスはシンプルなデザインであったが、細かく刺繍が施され、男の一護から見ても綺麗だと思えるドレスだった。
思わず一護はルキアを見た。彼女がこの写真のドレスを着たら………

(すっげぇ綺麗なんだろうな………)

と思った途端、無意識のうちに一護は呟いてしまった。

「いつか……着せてやるよ。ウェディングドレス」
「………え?」

一護の思わぬ言葉にルキアは目を瞠って驚く。無意識に言った一護の方も何故ルキアは驚いてるのだと首を傾げるが、しばらくして自分の言ったことの重大さに気付いた。

「わっ!ちょっ…!!俺、何言って………!!」

顔を真っ赤にし、両手を振る一護。恥ずかしさのあまり、一護にしては珍しく目に涙が溜まっている。
そんな一護を最初は呆然と見つめていたルキアだったが、しばらくしてクスクスと笑い始めた。
ああ、完璧馬鹿にされてる…と一護が思った時だった。

「ありがとう。一護」
「へ?」

マヌケな声を出して一護は顔を上げる。するとルキアが嬉しそうに微笑みながら一護を見つめていた。

「嬉しい。ウソでも嬉しいよ」

ルキアは更にニッコリと微笑む。だが一護はその笑顔にほんの少し怒りを覚えた。だから思わず一護は叫んでしまった。

「ウソじゃない!!」
「ひゃっ…!」

いきなり叫ばれて、ルキアは体をビクンと震わせた。そんなルキアを一護はギッと睨みつけ、怒鳴るように言った。

「ウソなわけないだろ!俺はお前が好きなんだから…!!」

そこまで言って一護は口篭る。その先を言うのは恥ずかしいようで、顔を赤くして俯いている。
しかし、言わなくてもその先の言葉がルキアにはなんとなくわかった。
ルキアは一護に近付き、そっと両手で一護の頬を包み込んだ。

「ありがとう」

そう言って、ルキアは一護の額にそっとキスをした。一瞬驚いた一護だったが、すぐにルキアに向かって笑った。何故ならルキアが一護の想いをわかってくれたから。
一護はルキアの肩に腕を回し、そっとルキアを抱き寄せた。ルキアも抵抗することなく一護の胸に寄り添う。

「なぁ、ルキア」
「なんだ?」
「俺さ、お前と一緒に過ごしてるだけで幸せなんだ」
「うん」
「これからも幸せに過ごしたい。お前と」
「……うん」
「だから…いつか……」
「ああ…待ってる。ずっと、待ってるから」



ずっと一緒にいよう。幸せを感じよう。







げひゃぶぅぅぅぅぅ!!!

ここここんなに甘くするつもりはなかったのに…!甘っ!甘すぎる!!
いつも思うのですが、何故このシリーズだと甘いものが書けるのだろう…??
久しぶりの捏造シリーズです!アンケートで相変わらず人気があるんだと思いました(笑)
更新が大変遅くて申し訳ないです;;;すみませんm(__)m

UPしたのは7月ですけど、制作期間は6月なのでジューンブライドっぽい話になってます。
ルキアが短大を卒業したら結婚しそうな話ですね。
結婚させませんけどね☆



up 08.07.01

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