来ては駄目だと言ったのに。あんなに酷い言葉を使って。
でも、心の何処かで彼なら此処に来るのではないかと思っていた。
だって……泣きたいくらいにわかるから。貴方のことが。


貴方は何処までも追って来る



『オレンジ色の髪の死神だそうだ』

恋次からその言葉を聞いた時、やはり…と思った。やはり彼は尸魂界ココに来た。私を追って。

「あれほど来てはならぬと言ったのに………」

私は小さな窓から外を見つめながら呟いた。此処に来た人物を思い浮かべて、ギュっと唇を噛む。
酷い言葉で彼を拒絶した。此処に来れば、彼は確実に殺される。それはイヤだった。不慮の事故で死神になった彼が自分のせいで死ぬのは。
しかし、あれだけ酷い言葉を言っても彼は此処に来る。そう思う自分もいた。



「お前も?」
「………何が?」

あれはいつかの雨の日。私は窓辺に座って降りしきる雨を見つめていた。その時一護に尋ねられた。
しかし、何が私もなのかがわからない。私は逆に聞き返した。すると一護はしばらく逡巡した後、小さな声で尋ねてきた。

「お前も……雨が嫌いなのか?」

私は目を瞠って驚いた。まさか気付かれるとは思わなかったから。私が雨を嫌っていることを。

「何故…そう思うのだ?」
「いや……何て言うか………」

私が尋ねると一護は口篭った。が、意を決したように一護は口を開いた。

「似てたから。雨を見つめるお前の目が………俺と」

ああ…と思った。数日前に知った一護の過去。一護もまた雨の日に大切な人を…母親を失っていたのだ。そしてそれを自分のせいだと思っていたのだ。
一護を庇って死んだ母親。でもそれはただの事故ではなく、虚によって母親は殺されていた。
衝撃の事実に混乱しながら、それでも虚を倒した一護。そしてその後の決意。それを聞いて私は羨ましく思った。
自分は一護のように吹っ切ることなどできない…と。

「なんだ?貴様、あの日のことは吹っ切れたのではなかったのか?」
「…吹っ切れるわけねぇだろ。でも、もっと強くなっていろんな人を助けたいと思うようにはなったな」
「そうか…そうだな」

やはり羨ましいと私は思った。自分はそんなふうに思うことはできない。その時一護が話しかけてきた。

「で…お前、雨嫌いなのか?」
「へ?ああ…」

そういえば、そんな話をしていたのだったなと思いながら、私は口を開いた。

「そうだな。雨の日にあまりいい思い出はない」

それ以上は話したくなかったから、私はそこで止めた。一護もそれ以上何も聞いてこなかった。てっきり「何故」と聞いてくるかと思ったのだが。
しかし聞かれないと逆に変な気がして、私は思わず一護に尋ねた。

「何故雨が嫌いなのか聞かないのか?」
「え?だってお前言ったじゃん。『自分から話してくれるまで待つ』って。だから俺もお前が話してくれるまで待つよ」
「そうか」

あの日のことをいつか話せるくらい、私と一護は近付くことができるのだろうか?
そんなことを思ってしまった。でもすぐにそれはムリだと思う。だって、いつか私はあちらに戻らなければならないのだから。どんな形でかはわからないが。

「なぁ、ルキア」
「何だ?」

名前を呼ばれ、私は一護を見た。すると一護は真剣な表情をしていて、柄にもなく胸が高鳴った。

「俺、お前のことも守るから」
「………は?」
「強くなって大切な人を守りたい。その中にお前も入ってるから」
「なん……で?」

一体どういう意味だと思っていると、一護が聞えるか聞えないかくらいの小さな声で言った。

「何でって……お前は大切な仲間だから………だ」

そのまま顔を逸らす一護。顔はおろか耳まで真っ赤にしている一護の姿に、私は驚いてしまった。
なんだか可笑しくなってきて、私はクスクスと笑った。すると眉間に皺を寄せながら、でも顔を真っ赤にして一護は叫んだ。

「言っとくけどな!お前がどこにいても、危ない時は絶対助けるからな!覚えとけよ!!」

まるで私に挑むかのような言い方。一護らしいと思いながら、私はさらに笑った。そして仄かな想いがその時芽生えた。



「全く…私の言うことを聞かないのだから、アイツは」

私は溜息をついた。今度は暗い牢の中を見渡した後後、そのまま目を閉じた。
兄様にやられた傷は治ったのだろうか?此処に来るまでにまた傷を負ったのではないだろうか?今、誰かと戦って傷を負っているのだろうか?
嫌なことばかりが思い浮かぶ。私はそれを断ち切るように首を横に振った。

「嫌だ………」

一護が傷つく姿を見たくない。
一護がどこまでも私を追ってくるってわかっているけれど、もうこれ以上私を追ってこないで。



世界で一番貴方を愛してるから。貴方が傷つく姿を見たくない。







過去最高に暗いお話かもしれません(笑)
これは眩/暈という曲を聴いて思い浮かんだ超絶駄文です。タイトルも歌詞を借りました;;;
ホントはもっと明るい話にしたかったのですが………
そこまで痛くないかな〜という判断でサイトにupしてみました(苦笑)

黒背景も初めてです。初めてですのよ、ウフww
シックな感じで気に入ってます!!

皆様の反応がどんなのか怖いです。暗くてすみません;;;






up 08.06.04


ブラウザでお戻りください