「大好きです」 君のその一言が、僕の世界を変えたんだよ。だから――― 初恋に酔う僕 「雲雀さん。俺の代わりにイーピンの授業参観に行ってもらえます?」 「………は?」 さすがの雲雀も、目の前のボンゴレ10代目の爆弾発言に目を丸くした。 「ちょっと待って。なんで僕があの子の授業参観に……って、その前に。ここはイタリアであの子は日本でしょ?」 「ああ。ホントは母さんが行く予定だったんだけど、用事が出来たから俺に頼んできたんですよね」 雲雀の最もな意見に、ボンゴレ10代目・沢田綱吉は爽やかに答える。 そう。今、雲雀たちはイタリアにいる。そしてイーピンは日本の小学校に通っているのだ。 「でも、俺もその日急用が出来ちゃって。だから雲雀さん。お願いしますね」 「イヤ…だから…何で僕なの?」 「え?だって………」 綱吉はさらに爽やかに笑って言った。 「雲雀さん。イーピンのこと好きなんでしょう?」 三日後。雲雀は日本のイーピンが通う小学校にいた。 『無理矢理頼んだから、一週間休暇をあげます。その間にイーピンといっぱい遊んできて下さいね』 ニコニコと笑いながら言った綱吉を思い出して、雲雀の眉間に皺が寄る。 何故、イーピンへの想いがバレたのだろうと雲雀は思った。誰にもそんな素振りは見せなかった。 それが、そういうことに一番疎そうな綱吉にバレるとは思ってもいなかった。 いや。どこか食えない男になってしまった今の綱吉ならバレてもおかしくないかも、と雲雀は思った。 それに休暇が入る度に日本に行っては、イーピンに会っていた。そこからバレたのかもしれないとも思う。 そんなことを考えながら、雲雀はイーピンの教室に入った。 雲雀が教室に入った瞬間、先に来ていた親―ほとんどが母親―たちが会話を止めて雲雀を見た。 (お父さん…じゃないわよね………?) (若すぎるわよ。お兄さんじゃない?それにしても…カッコイイわね) 母親たちがヒソヒソと話しているのをムシして、雲雀は教室の隅の壁に背中を預けた。 騒ぎ始めた親たちに気付いて、子どもたちがチラチラと後ろを見る。それはイーピンも一緒で。 雲雀を見た瞬間、目を瞠って驚き立ち上がった。しかし、担任が入ってきたので再び椅子に座る。 座った後、イーピンは雲雀の方を見てニッコリ笑うと、小さく手を振った。雲雀もそれに手を振ることで答えた。 「ツナさんが来るって聞いてたんですけど、どうしたんですか?」 授業が終わった後、雲雀の元に駆け寄ってきたイーピンはそう尋ねた。雲雀は思わず溜息をつく。 「彼もね、急用が出来て来れなくなったんだよ。僕はその代理」 「あ……ごめんなさい。雲雀さん、迷惑でしたよね………」 雲雀の言葉を聞いて、イーピンは項垂れる。雲雀はしまったと思い、慌ててイーピンの頭を撫でた。 「そんなことないよ。君に会えたのは嬉しい。……元気そうで良かった」 イーピンはパッと顔を上げて雲雀を見ると、それは嬉しそうに微笑んだ。思わず雲雀も微笑み返す。 「とりあえず。帰りましょうか?お姫様」 雲雀はイーピンに向かって手を差し出す。イーピンは「はい!」と嬉しそうに答えてその手をとった。 「イーピンちゃん。その人、イーピンちゃんのお兄ちゃん?」 クラスメイトの一人が無邪気に尋ねる。周りの親たちは思わず聞き耳を立てた。 「え?えっとね、雲雀さんはねぇ………」 イーピンがクラスメイトに答えようとした時。 「イーピンの恋人だよね、僕は」 と雲雀が先に答えた。イーピンとクラスメイトは意味が分かっていなかったが、周りの親はギョッとした。 しかし雲雀はそんなことを気にすることなく「行こうか」と言って、イーピンと教室から出て行った。 雲雀たちが出て行った後、教室は親たちがキャーと叫んでいた。 「雲雀さん。コイビトって何ですか?」 学校を出て、近くの公園に立ち寄った二人。イーピンは先程から気になっていたことを雲雀に聞いた。 「恋人…そうだね。大好きな人って意味かな」 「大好き………ハイ!私も雲雀さんが大好きです!!」 イーピンはほんのり頬を赤く染めながら笑って言った。それを聞いて、雲雀も微笑む。 最初は、普通の子どもと違ってやたら強いイーピンに興味を持っただけだった。 リボーンから「イーピンは将来有望な暗殺者」と聞いた時は、本当に面白い子だと思った。それだけだった。 だから時々、雲雀は彼女の稽古に付き合ってあげた。子どもながらに強いイーピンに教えるのは楽しかった。 鈍い雲雀でも、自分を見て頬を染めるイーピンを見れば、好かれてるんだな…と薄々感じていた。 しかし、雲雀にとってイーピンはあくまで教え子だった。 それが変わったのは一年前のこと。 久しぶりに日本に戻ってきた雲雀はイーピンの稽古に付き合っていた。 その頃、綱吉と共にイタリアに渡った雲雀は以前ほどイーピンに会えなくなった。彼女は日本に残ったから。 初めは何とも思っていなかったのだが、日が経つにつれイーピンに会えないことにイライラするようになった。 そのうちイライラする自分に腹が立ってきて、雲雀は綱吉から無理矢理休暇をもぎ取って日本に帰った。 帰ってすぐにイーピンに会いに行くと、イーピンはそれは嬉しそうに微笑んだ。 「雲雀さん。どうしたんですか?帰国してたなんて知りませんでした」 「何となく、帰りたくなったんだよ」 休憩中、イーピンに尋ねられた雲雀は適当に答えた。まさか君に会いたくて…なんて言えなかった。 「そうなんですか」 「何?君、僕が帰ってきたのが嬉しくないの?」 意外そうに答えるイーピンを見て、雲雀は思わず睨んでしまう。イーピンはそんな雲雀を見てオロオロした。 「え?だって!雲雀さんって淋しいなとか思わない感じがしたから!!」 「君さ…僕のこと何と思ってるの?」 雲雀は溜息をつきながら尋ねた。 「え?雲雀さんです」 何ともいえないイーピンの答えに、思わず雲雀は項垂れた。 「雲雀さん?」 「あのさ…君、淋しいと思わなかったの?」 「へ?」 「僕がイタリアに行って…淋しいと思わなかったの?」 思わずそう口走った雲雀。イーピンは驚いたように雲雀を見つめていた。 子ども相手に何を言ってるんだ、と雲雀は思った。ところが。 「淋しかったです。雲雀さんがイタリアに行って淋しかったです」 「………え?」 イーピンから答えが返ってくるとは思わなかったので、雲雀は目を瞠った。 するとイーピンはニッコリと微笑んで雲雀に言った。 「大好きです。雲雀さんが大好き。だから帰ってきてくれてありがとうございます」 その言葉を聞いた瞬間、雲雀はああ…と思った。 自分もこの子が好きなんだと。会えなくて、淋しくて…だからイライラしていたんだと。 「僕も君のこと大好きだよ」 雲雀はイーピンの頭を優しく撫でた。 あれから一年が過ぎたんだな…と雲雀は思う。 イーピンはまだ小学生だから、あの日雲雀が言った『好き』の意味にまだ気付いていない。 それでもいいと雲雀は思っている。イーピンが自分に好意を寄せているのはわかっているから。 その『好き』がもう少ししたら違う意味を持つものになるのもわかっている。 だから今はこの関係に満足している。 「イーピン」 「何ですか?雲雀さん」 雲雀に呼ばれて、イーピンは振り返る。雲雀はイーピンの頭を撫でながら言った。 「僕、一週間休暇貰ったんだよね。どこか行きたいところある?」 イーピンは驚きのあまり目を瞠る。そのうち頬を染めて俯いてしまった。 「何?どうしたの?」 雲雀は眉間に皺を寄せる。自分と出掛けるのがイヤなのだろうかと思った。すると。 「あのね。私…雲雀さんと稽古したいです」 チラリと雲雀を見て言ったイーピンは、顔をさらに真っ赤にして俯く。 そんなイーピンを可愛いなと思いながら雲雀は微笑んだ。 「いいよ。稽古してあげる」 『大好きです』君のこの一言で僕の世界は変わったんだよ。 それまで、自分の中にこんな感情があるなんて知らなかったんだから。 ねぇ?君にとって僕は初恋の相手なんでしょ? 僕も君が初恋なんだよ。 僕がこの初恋に酔っていること、いつか君に教えてあげるね。 ―おまけ― 「ツッ君。本当は日本に行ってイーピンちゃんに会いたかったんじゃないの?」 ボンゴレ本部の一室。紅茶を淹れながら京子は綱吉に尋ねた。 「うーん。会いたかったけどさ、毎日あんなメールを見たら…ねぇ………」 苦笑しながら、綱吉は京子が差し出したカップを受け取る。 京子はクスクスと笑いながら、綱吉の隣に座った。 イーピンを妹のように思っている綱吉は、毎日のようにイーピンとメールしている。 内容はその日の出来事、主に学校でのことなのだが、毎日のように尋ねられることがある。 雲雀さんは元気ですか?と。 雲雀さんに会いたいとは書かないが、それだけは毎日のように聞いてくる。 ちなみに綱吉には聞いてこない。毎日メールしているから聞かなくてもわかると言えばそれまでだが。 それでも、なんか悔しいなぁ…と綱吉は思っていた。 今回、授業参観の話が来た時、絶対に帰国してイーピンと遠出でもしようと意気込んでいた。 しかし、毎日届くメールや雲雀を見る度に考えが変わった。 なかなか会えない二人を会わせてあげたほうがいいかな…と。 小さなイーピンを雲雀が大切に思っているのは知っていた。 イーピンが雲雀のことを好きなのも知っている。 二人には幸せになってもらいたい。大好きな人たちだから。 「偶には二人も会わないと淋しいだろうしね」 綱吉は京子に微笑む。京子も「そうだね」と頷いた。 「それに………」 そこで口を噤んだ綱吉を、京子は首を傾げて見つめる。 「俺は毎日京子ちゃんに会ってるからね。不公平なのはいけないよね」 そう言って微笑んだ綱吉に京子は顔を真っ赤にしながら微笑んだ。 投石だけはご勘弁を・・・!! 勢いとは恐ろしいです。制作時間約二時間ですよ、コレ。 初の他版権。ヒバピンです。チャット中に駄文の神様が降臨してできました(苦笑) しかし、何とも言えません。元々原作を見たことがないんですよね;;; 二次の世界でしか二人には会ったことありません。 嘘っこな二人でごめんなさい!!ファンの方、申し訳ありません!! でも書いてて楽しかったですvvでも多分もう書かないです(汗) 何故か妙に間が開いてます。さぁ。なんでしょうね(笑) 最後に。ぐーちゃんへ愛を込めて・・・ 藤の花言葉 ―恋に酔う― up 07.10.20 ブラウザでお戻りください |
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