「本当に怖くないのだろうな………?」
「大丈夫だって」

ここまで怖がられると、なんかイジワルしたくなるな………、と一護は思った。


流れ星を探す君



「まだ帰ってない!?」
「そうなの。お兄ちゃんと一緒かと思ってたんだけど。どうしたのかなぁ?」

遊子が帰ってこないと心配しているのは、最近黒崎家に正式に居候するようになったルキアのこと。
普段はほとんど一護と一緒にいるのだが、今日は一護が教師に呼び出しを受けたのでルキアは先に帰ったのだ。
ところが、一護より1時間近く先に帰ったはずなのにまだ帰っていないという。
一護は深く溜息をつくと、自転車の鍵をとった。

「ちょっとその辺探してくる」
「わかった。気をつけね」

遊子が心配そうに言う。すると、それまで黙って話を聞いていた一心と夏梨が一護に近付く。

「なんだよ?」

眉間に皺を寄せて二人を見る一護。そんな一護に二人はニヤリと笑って言った。

「一護、二人きりだからって………」
「襲っちゃダメだよvv」

そして二人同時に一護の肩にポンと手を置く。
一護は頬を引き攣らせはしたものの、怒鳴ることだけはなんとか抑えることができた。ここで怒鳴ったら負けた様な気がするからだ。

「……行ってくる」

顔を顰めて出て行く一護。一心と夏梨は「気をつけてね〜vv」と爽やかな笑顔で手を振りながら一護を見送った。
一護は深い溜息をついた。



自転車を走らせること数分。家の近くにはいないのか、ルキアの姿は見えない。

「しかたねぇ。霊圧探ってみるか………」

霊圧探るの得意じゃないんだよな、と思いながら一護はルキアの霊圧を探した。

「公園……か?」

ルキアの霊圧を公園から感じる。一護は自転車に跨ると、公園に向かって走った。

公園について、一護は自転車から降りた。ルキアはどこにいるのだろうと公園内を見回した。
すると、ブランコに座って空を見上げているルキアを見つけた。一護は溜息をついてルキアに近付く。

「何やってんだよ?」
「うひゃあ!?」

一護が近くにいることに気付いてなかったようで、ルキアは一護に声をかけられて思いっきり驚いた。

「なんだ!一護!いきなり声をかけるな!!ビックリしたではないか!!」

かなり驚いたようで、ルキアは目に涙を溜めて一護を睨みつけた。悪いことをしたなとは思ったが、一護は眉間に皺を寄せてルキアに言った。

「お前が帰ってこないって遊子が心配するから探しに来たんだよ。てか何やってんだ、お前?」
「探してくれたのか?すまんな。早く帰るつもりだったんだけどな。流れ星を探してたらかなり時間が経ってしまったようだ」
「流れ星?」

なんでまた流れ星なんだと一護は首を傾げる。ルキアは一つ頷くと、真剣な表情で言った。

「だって、流れ星に願いを三回唱えると願いが叶うのだろう?」

井上から聞いたのだ、と続けるルキアを見て一護は溜息をついた。

「それだけのために何時間とブランコに座って流れ星を探してたのかよ………」
「そうだ。悪いか?」
「別に悪くはないけど。連絡ぐらいはしろよ。遊子が心配するだろ?…しかし、そんなに一生懸命に探すくらい叶えたい願いがあるのか?」
「ああ」

呆れ顔でルキアを見る一護。ルキアはそんな一護に淡く微笑んで言った。

「早く破面との戦いが終わって、皆が…一護が幸せに過ごせますように………とな」

一護は驚き、ルキアを見た。ルキアは再び空を見上げる。

「私の所為で貴様はこの戦いに巻き込まれたからな。井上たちも。本当に、すまない」

悲しそうに目を閉じるルキア。一護はルキアの目の前まで行き、座り込んだ。ルキアとちゃんと向き合うために。

「お前の所為じゃない。むしろ俺はお前に感謝してる。家族や仲間を護れる力を手に入れることができたから」
「一護………」
「確かに俺の中に虚がいて大変だけど、それも何とかなるだろう」

ニッと笑いかける一護。その笑顔にルキアも思わずつられて笑った。それを見て一護は立ち上がった。

「さてと。とにかく遊子も心配してるし、もうすぐメシだから帰るぞ」

言ってルキアに手を差し出す。ルキアは「ああ」と頷いて一護の手をとった。



「ほら、乗れよ」

自転車に跨ってルキアに後ろに乗るよう促す一護。しかしルキアは自転車を見つめたまま動こうとしない。そして。

「これにどうやって乗るのだ?」

と聞いてきた。思わず項垂れる一護。そういえば自転車に乗せるのは初めてだったことに気付く。

「普通にこれに座ればいいんだよ」

一護は後ろの荷台を指差す。

「こんな小さな椅子に座るのか?それよりどこにつかまればよいのだ?」
「ちゃんと座れるし、俺の服でもつかんどけ」
「わ…わかった」

ルキアはおそるおそる荷台に乗った。そして遠慮がちに一護のシャツをつかんだ。それを見て一護はペダルを踏む。

「きゃあ!」

いきなり動き出した自転車に驚いてルキアは悲鳴を上げる。そのルキアの悲鳴に一護は驚いた。

「いきなり大声出すなよ!ビックリしたじゃねぇか」
「だ…だって。いきなり動き出すから………」

涙目で訴えてくるルキア。今まで見たことがないルキアの表情に、一護は一瞬胸が高鳴った。

「そんなに怖がらなくてもスピード出さないから大丈夫だって」

ルキアを安心させるため、そして自分の気持ちを落ち着かせるために一護は言った。
ルキアは一護を見つめておそるおそる尋ねた。

「本当に怖くないのだろうな………?」
「大丈夫だって」

怖がるルキアを安心させるように言ったが、ここまで怖がられるとイジワルしたくなるな、と一護は思った。
しかし、ギュッとシャツを握り締められるとさすがにイジワルはできない。一護はゆっくり自転車をこいだ。



最初は一護のシャツを握り締めて固まっていたルキアだったが、慣れてきたのか空を見上げている。

「また流れ星探してんのか?」

思わず質問した一護。ルキアは一護に笑いかける。

「ああ。早く皆が幸せに過ごせる日々が来て欲しいからな」

言ってルキアはまた空を見上げる。一護は溜息をついてルキアに言った。

「その願い、俺が叶えてやるよ」

一護の言葉にルキアはビックリした。空に向けていた瞳を一護に向ける。

「俺がアイツらを倒せば皆幸せになれるだろ?」

ニッと笑う一護。ルキアは慌てて一護のシャツを引っ張った。

「そうではない!確かに皆幸せになって欲しいが、私は一護に幸せになってもらいたいんだ」

一護は思わず自転車を停める。いきなり停まった自転車にルキアはバランスを崩し、一護の背中に思いっきり顔をぶつけた。

「…いったぁ……。一護!いきなり停まるな!!思いっきり顔をぶつけたではないか!!」

抗議したルキアだったが、一護が耳を真っ赤にしてルキアを見つめているので思わず首を傾げる。そんなルキアを見て一護は口を開いた。

「さっきから思ってたんだけど、流れ星探してるのって俺のため?」
「………え?」

一護に言われて考え込むルキア。そして自分が一護のことを一番に思って流れ星を探していることに気付いた。

「あ!それは…その…あの…何ていうか。えっと………」

恥ずかしさのあまり訳のわからないことを言うルキア。一護は思わず笑ってしまった。

「サンキュ」

照れながら礼を述べる一護。ルキアは一護以上に顔を真っ赤にして頷いた。

「さてと。マジで早く帰らないとメシ抜きになっちまう」

携帯を見ればもうすぐ門限の時間。急がないと本当に夕飯が食べれなくなる。

「ちょっとスピード出すからしっかりつかまってろよ」
「わかった」

そう言って一護はペダルを踏み込み、ルキアは一護のシャツをしかっり握った。



家に帰りつくまで二人は一言も話さなかった。
しかし、考えていたことは同じこと。

破面たちを倒して、幸せに過ごせる日々を手に入れてみせる。



愛しい人のために。







diaryでも言ってました、イチルキ自転車ネタでございます!!
自転車というより流れ星話って感じですが………(汗)
今回、内容もタイトルも悩みました。ちなみに初めに考えていたタイトルは……
『ドキドキ☆自転車二人乗り』でした。マジです。本当です。
でも、なんだかなぁ…と思って止めました。その後もうんうん唸り続け……
無難に今のタイトルにしました。自転車はどこに行ったのか。
あぁ!!誰か私にオシャレなタイトルの付け方を教えてください(切実)
それにしても、最初のタイトルだったら全然内容と合ってないですね。
破面編の最初の頃くらいの設定です。ひよりちゃんたちとの修行はどこいったって感じですね♪
甘めを目指して頑張りましたが、甘いかどうか………(汗)
本当に要修行です。



up 07.04.14

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