1人が寂しいことを教えた人
現実に戻されるのはこういうことなのだろうか?そんなことを思いながら、一護は机に向かっていた。
ルキアがソウルソサエティに連れ戻され、処刑されると知ってから、我武者羅に戦い続けた日々。
何とかルキアを助けることはできたが、いろいろとあって、すっきりしない終わり方ではあった。
ようやく現世に戻ってきた一護に残されたものは、残り少ない夏休みと大量の課題。一護はそれを終わらせるべく、黙々とペンを走らせていた。
あの戦いの日々が夢だったのではないかと思える今の作業に、一護はこっそり苦笑した。
「うおおーあちぃーヒマだー」
「………………」
突然聞こえてきた声に、一護の眉間の皺が寄る。チラリとベッドに目を向けると、コンがベッドの上でゴロゴロしていた。
「あちぃー一護ぉーエアコンつけろー」
「うるさい。このくらいの暑さ、我慢しろ」
「いやだーつけろー」
ベッドの上で手足をジタバタさせて抗議するコン。一護は更に眉間に皺を寄せてコンを睨みつけた。そして再びペンを走らせた。
そんな一護を見て、コンは大声で叫んだ。
「エアコンつけろよ一護!!ネェさんがいた時はつけてたじゃねぇか!?」
プツンと、一護の中で何かが切れた。
一護は暴れるコンの腕を掴むと、そのまま部屋を出て階段を下りる。「何すんだ!?」と焦るコンを無視して、一護はリビングのドアを開いた。
「遊子。お前のぬいぐるみが廊下に落ちてたぞ」
「え?あー!ボスタフだ!!お兄ちゃん、ありがとう」
一護からコンを手渡されて喜ぶ遊子。一護は「よかったな」と言ってリビングのドアを開いた。
ドアを閉める時にチラリと見えたコンの顔は真っ青だったが、俺には関係ないとばかりに一護は鼻で笑ってその場を去った。
「ホント、熱いな…」
部屋に戻った一護は扇風機のスイッチを入れると、そのままベッドに寝転んだ。
あと少しで課題が終わる。ラストスパートをかけなくては。そう思いながら背伸びをすると、右手に何か硬いものがあたった。
思わずそれを手に取る一護。それはクーラーのリモコンだった。
「一人の時につけるのってもったいないよな…」
呟いて、ふと考える。そういえば、昔は一人でもエアコンをつけていたことを。
つけるのがもったいないなんて思うようになったのは………
『このエアコンと言うのは面白い道具だな!』
『そうか?ただ冷たい風が出てくるだけだぜ』
壁に付いているエアコンを物珍しそうに眺めるルキア。その様子を呆れたように見つめる一護。
本格的な夏が近付いてきて暑くなってきたある日。あまりの部屋の暑さに一護はエアコンのスイッチを入れた。
そうでなくても狭い部屋に二人も人がいるのだ。熱気で部屋が暑い。
『何だか涼しくなってきた』
ニコニコと笑うルキアを見て、一護も思わず口元を緩める。
『俺がいない時もつけていいからな、エアコン』
『え?』
『これからどんどん暑くなるからな。押入れなんて特に暑いと思うし』
一護の言葉に最初は呆気にとられていたルキアだったが、突然クスクスと笑い出した。
笑うルキアを見て、一護は眉間に皺を寄せる。
『いいよ。貴様が帰ってくるまでエアコンとやらはつけない』
『は?何で?』
『だって、もったいないではないか』
『電気代が?』
そんな今更と一護は思う。初めてあった時から、ルキアは一護にいろいろな面で養ってもらってると言っても過言ではないのだから。
するとルキアはニッコリと一護に微笑んだ。
『こんな涼しい風をひとり占めだなんてもったいない。涼むのなら、貴様と一緒に涼みたい』
一護は押入れを開けた。そこにルキアはいない。一護は置かれてある布団の上に両手を置く。
名前を呼べば応えてくれた。
一緒に宿題もした。
テレビを見て笑ったり、音楽を聴いた。
くだらない話をした。大切な話もした。
いつの間にか、隣にルキアがいることが当たり前になっていた。
今まで一人でも平気だった。むしろ一人の方がよかった。
母親が死んだあの日から、殻に閉じこもってしまった自分。そんな自分の世界を彼女はたった数ヶ月で変えてしまった。
「ルキア…お前に逢いたい」
ルキア。お前は俺に、一人が寂しいことを教えてしまった。
久しぶりのお題更新です!!今年こそはお題コンプリートしたいと思っています。
…思ってるだけだろうとか言わないでやってくださいm(__)m
サイトが二周年を迎えたので記念と、二周年はお題コンプリートするぞ!という意味をこめて制作しましたww
企画を考え切れなかったというのもありますが(´V`)
今回は、ソウルソサエティから帰った後の一護の心境話です。王道を突っ走りました…!
今までずっと一緒にいた人がいなくなって、寂しいなってルキアが帰ってくるまで思ってたはず!
そう思って書いたのですが、なんか女々しいお話になってしまった感が;;;
次はラブラブなイチルキが書きたいです☆
駄文ですが、皆様が楽しんでいただけたなら幸いですww
up 09.03.02