この温もりが、私を救ってくれる。
もう少しだけここに
ベッドの上に寝転がり、本を読んでいた時だった。
カチャリと部屋のドアが開く音がして顔を上げると、ルキアがジッと一護を見つめていた。
「どうした?」
いつもと違うルキアの様子に首を傾げながら一護は起き上がり、声をかけた。ところがルキアは何も答えず、スッと顔を俯かせた。
その態度に一護はますます混乱する。
「どうしたんだよ?」
先程より少し優しい口調で尋ねてみる。するとそれに安心したのか、ルキアはホッとしたような表情を一護に向ける。そして………
「隣、座ってもいいか?」
弱々しく尋ねられ、一護は内心驚きつつ、黙って頷いた。
ルキアは「ありがとう」と小さな声で呟くと、ちょこんと膝を抱えて一護の隣に座った。
一護はルキアが座ったのを確認してから、再び本に目を向けたのだが………
(なんで話しかけてこないんだ?)
いつもは無駄に話しかけてくるルキアが黙っていることに、一護は首を傾げた。
本から目を離してルキアを見つめてみるが、ルキアは自分が見れられていることに気付いていない。そんなルキアの様子を見て、一護は「ああ…」と心の中で呟いた。
「ルキア」
「………何だ?」
ゆっくりと、どこか頼りなげな瞳で見上げてくるルキアを心配そうに見つめながら、一護は口を開いた。
「何かあったのか?」
「え………?」
ルキアは大きく目を見開いて一護を見た。
「何故…そう思うのだ?」
「んー……お前、何かあると一人で考え込むだろ?」
ルキアは驚きのあまり言葉を失った。一護が自分が落ち込んでいることに気付いていたことに、驚きを隠せなかった。
「で、何があったんだ?白哉とケンカでもしたか?それとも今日の小テストの点数が悪かったか?」
「なっ………!」
ニヤリと意地悪く笑いながら尋ねる一護を、ルキアは顔を真っ赤にして睨みつけた。
「そんなんじゃない!義兄様とはケンカしてないし、今日の小テストはかなりいい点が取れた!」
「じゃあ何なんだよ?」
「それは………」
すかさず尋ねられて、言葉に詰まる。
しばらく「あー…」「うー…」と唸っていたルキアだったが、答えを求めて自分を見つめてくる一護に耐えきれなくなり、ポツリと呟いた。
「笑わないか?」
「ああ」
「本当に?」
「約束する」
コクリと頷く一護にどこか安堵しながら、ルキアは口を開いた。
「その…怖い夢を見て」
「怖い夢?」
一護は目を瞠って、まじまじと隣に座るルキアを見つめた。それからしばらくして、プッと小さく噴出した。
「わ、笑わないと約束したではないか!?」
ギッと睨みつけながら、一護の腕をポカポカと叩くルキア。
「悪い、思わず」
ルキアの攻撃を避けながら、それでもクスクスと一護は笑い続ける。
どう見ても謝っているとは思えない一護の態度に、ルキアはプイっと顔をそらした。
「もう知らん!」
そう叫んで、ベッドから立ち上がろうとしたルキアだったが、ふいに一護に右腕を引っ張られて再び座り込んだ。
「何をするのだ!?」
ルキアは自分の右腕を掴む一護を再び睨みつける。しかし一護は悪びれもせず、ルキアの腕を掴んだまま言った。
「悪かったって。で、どんな夢を見たんだ?」
「手を離せ!」
「お前がどんな夢を見たか教えない限り、離さない」
ニヤリと笑いながら、ルキアの腕を掴む手に力を込める。
ルキアは何度も一護の手を振り払おうと試みたが、しっかりと掴んでいるため動かすことができない。
このままでは埒が明かない。そう判断したルキアは、不本意ながらも自分が見た夢の内容を一護に話すことにした。
「夢の中で…誰かはわからないのだが、手を繋いで歩いてたのだ」
とても温かい手だった。柔らかくて、どこか安心する。
しばらく歩いていたら、その手が突然離れてしまった。どうしたのかと顔を上げたら、辺り一面真っ暗闇だった。
「誰かいないのかと叫んだ。恋次や兄様の名を呼んだ。井上たちも」
でも誰も答えてくれなかった。
怖くなって「助けて」と叫んだ瞬間、目が覚めた。
「………それだけだ」
「………………」
話を聞き終わった一護は、何とも言えない気持ちでルキアを見つめた。
ルキアは一人になるのを恐れている傾向がある。それは彼女の過去に原因があるのだろうと一護は思っていた。
今更過去の出来事を元に戻すことはできないし、自分の知らないことだから慰めることもできない。だったら、今できることは。
「ルキア」
「何……ひゃあっ!?」
名前を呼ばれて振り返ったルキアは、突然襲ってきた浮遊感に声をあげた。
それと同時に、心地よい温もりを感じて恐る恐る顔をあげる。すると、すぐ側に一護の顔があって驚きのあまり辺りを見回した。そこで初めて、今の自分の状況をルキアは知った。
自分が今、一護の膝の上に横抱きされていると。
「一護!?」
「ん?」
「貴様、何をしておるのだ!?」
「何って……抱っこ?」
何事もなかったかのようにサラリと反応する一護にルキアは絶句する。
そんなルキアの態度に一護は苦笑しながら、小さな声で呟いた。
「こうしてたら落ち着くだろ?」
「え………?」
「怖い時とか寂しい時、誰かに抱きしめられたら落ち着かないか?」
「あ…………」
ルキアの目がほんの少し見開く。
「何か嫌なことがあったらすぐに俺の所に来い。俺はお前を置いて何処かに行ったりしないから。ずっと側にいるから」
一護の言葉を聞いた途端、ルキアの目に涙が溜まった。でもそれを一護に見られたくなくて、ルキアは一護の胸に顔を埋めた。
すると、一護がルキアの背中を優しく撫で始めた。その心地よさに、ルキアはそっと目を閉じる。
「一護」
「ん?」
「しばらく……このままでいてもいいか?」
「ああ…いいぞ」
「ありがとう」
ルキアはキュッと一護のシャツを握り締めた。
一護さんはルキアさんの精神安定剤。
そういうつもりで書いてたのですが、思ってた出来上がりにならなかった;;;
最初は暗い話を書く予定だったのですが、本誌がアレな展開なので自給自足してみました。
なんか支離滅裂な話になった気がしてならない。゚(゚ノД`゚)゚。
よくよく考えたら、この話って一護にとって美味しい状況ですよね。
ベッドの上でルキアさんを抱っこ………そのまま押し…げふんごふん。
当サイトは健全サイトです☆
up 10.12.06