急いで大人にならなくていい。今の君が好きだから。


今のままで十分可愛い



「高校生になったからって、すぐに大人になるわけじゃないんですね」
「………はい?」

ある昼下がり。
常なら自分のアジトでゆっくりと過ごすのだが、二か月ぶりに会う恋人と早く話したくて、雲雀は恋人であるイーピンが薦めるカフェに足を運んだ。
久しぶりに会ったイーピンは、真新しい高校の制服を着ていた。
最後に会ったのは中学の卒業式。それから任務で日本を離れていたので、高校の制服を着たイーピンを見たのは初めてだった。
高校の制服を着ているからかもしれないが、少し大人っぽくなったな…と雲雀は思っていた。なのに。

「大人になるわけじゃないってどういう意味?」
「え?ああ…それはですね」

ほんの少し困惑気味に尋ねる雲雀に、イーピンは眉間に皺を寄せながら言った。

「私、『高校生』って大人だと思ってたんです」

イーピンの答えは更に雲雀を困惑させた。どう答えていいかわからず、只々首を傾げる。
そんな雲雀の反応に、自分の説明不足を感じたイーピンは「説明しにくいんですけど……」と続けた。

「小さい頃から、高校生って大人に見えたんです。実際、雲雀さんやツナさんたちは大人に見えたし」
「それは…僕が高校生の頃、君は小学生だから」
「そうなんですけど。でも今考えても、雲雀さんたちは高校生にしては大人びてましたよ」
「まぁ、普通の高校生とは違ってたからね」

何と言っても、自分たちはあの時すでにマフィアの一員だったのだから。
そういう意味を込めて、雲雀はフッと鼻で笑った。

「確かに雲雀さんたちは普通の高校生とは違う生活を送っていたから仕方ないですけど。でも、私が中学生になってからも高校生は大人に見えたんです」
「君より三〜五歳は上だからね。大人に見えてもおかしくないけど」

自分より年上の者は全員大人に見える。子どもとはそういうものだ。そう雲雀は思ったが、イーピンはそれは違うと首を横に振った。

「中学を卒業するまでは、一つ年上の高校生も大人だなって思ってたんです。でも、いざ自分が高校に入学してみたら………」
「大人じゃなかった……と?」

雲雀の問いに、イーピンはコクリと頷いた。

「それどころか、中学生の時みたいに暴れるし、落ち着きがないし……ちょっと残念と言うか。どうしてかなぁ?前はあんなに大人っぽく見えたのに」

自分の見る目が変わってしまったのだろうか?だとしたら、何故彼らが子どもっぽく見えるのだろう?
わからない…と心の中で呟いた時、クスクスとどこか楽しげに雲雀が声を上げて笑った。

「それは仕方ないよ。卒業して数か月で大人になれるわけないし、一年経ったからって大人になるわけでもないし」
「でも…前は本当に」
「それは君も高校生になって、周りの高校生を見たら自分と変わらないからそう思うんだよ」

テーブルの上のティーカップを手に取ると、それをゆっくり揺らしながら口を開いた。

「人はすぐに成長しないよ。ゆっくり大人になっていくんだ。」
「でも雲雀さんたちは………」
「僕たちは仕方ないんだよ。ああいう世界に住んでいるからね。大人にならざるを得ない。君もさっきそう言ったじゃない」

毎日が危険と隣り合わせ。そんな日々を送っていれば嫌でも考え方が大人になってしまう。
雲雀は紅茶を口にすると、ほんの少し首を傾げた。

「ところで何故そんなに『大人』に拘るんだい?普通、高校生はまだ子どもだと思うんだけど?」
「それは……その…」

問われた途端、どこか言い難そうにイーピンは視線をあちこちに彷徨わせる。
そんなイーピンを急かすことをせず、雲雀は黙って彼女が答えるのを待った。ジッと、彼女を見つめて。
雲雀の視線が痛いと感じたが、このまま何も言わずに黙っていても引いてくれないことはわかっていたから、イーピンはそっと溜息をついた。

「だって、大人になれば…雲雀さんと並んでてもおかしくないでしょう?」
「………はい?」

頬をほんのり赤く染め、潤んだ瞳で見つめられながらの発言に、不覚にも雲雀は呆けてしまった。
しかしすぐに我を取り戻す。イーピンの可愛らしい姿を思い出さないようにしながら、先程のイーピンの発言を反芻した。そしてすぐに首を傾げる。

「今の君じゃ僕と並んだらおかしいってこと?」
「えっ……!?だって」

一気に不機嫌になった雲雀を見て焦りながら、イーピンは早口で叫んだ。

「だって!私、子どもっぽいから。高校生になればちょっとは大人っぽく見えるかなって。雲雀さんと並んでもおかしくないかなって」

うぅ…小さく呻いて、イーピンは肩を落とした。
その様子を黙って見つめていた雲雀だったが、暫くして大きな溜息をついた。
溜息を聞いて何事かとイーピンが顔を上げると、目の前には顔に手をあてて考え込む雲雀がいた。

「雲雀さん?」

恐る恐る声をかける。すると、どこか困ったような表情で雲雀はイーピンに目を向けた。

「別に急いで大人にならなくていいよ。僕はそのままの君が好きだし、今のままで十分可愛いから」
「へっ!?」

ボンっと音をたてたかのように顔を真っ赤に染め上げるイーピン。その反応に思わず笑みを浮かべる。

「今できることをしながら、ゆっくり大人になればいいよ。急がなくてもいつか大人になるんだから」
「は、はい………」

真っ赤な顔のまま頷くイーピンを見て満足げに微笑むと、雲雀は椅子から立ち上がった。

「そろそろ行こうか」
「あ、はい」

入口に向かって歩き出した雲雀を追うように、椅子から立ち上がる。すると、雲雀が歩みを止めて振り返った。

「言い忘れてた」
「はい?」

キョトンと首を傾げるイーピンに微笑みかける。

「入学おめでとう。その制服、よく似合ってるよ」

そう言って、再び入口に向かって雲雀は歩き出す。
その後ろで、先程と同じように顔を真っ赤に染めて、呆然とイーピンは立ち尽くしていた。



今のままでも十分可愛いのに、大人っぽくなったら周りが放っておかないから。
しばらくは僕のために子どものままでいてね。
それに…子どもだろうと大人だろうと、僕の隣にいるのは君だけだと思っているから。

僕と並んで歩くのは後にも先にも君だけ。







相変わらず支離滅裂な文章だなぁ…反省しています;;;
ヒバピンのお題…というより、ヒバピンの駄文自体UPするのが久しぶりです。
最後にヒバピン駄文をUPしたのが去年の5月でした…1年ぶりだぜ☆
拍手小咄でUPしてたから書いた気分でいました、エヘ(o´ω`o)

「今のままで十分可愛い」
なんか、タイトルに沿ってないお話になったような気がします。
とりあえず、雲雀さんがイーピンを好き過ぎるお話です。
雲雀さんが別人です☆

up 11.06.15


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