祝ってくれてるとは思えません。
Lo celebra?
『イーピンの誕生日にはとっておきのモノをプレゼントするね』
『わぁ!ありがとうございます!ツナさん』
一ヶ月程前、綱吉と交わした会話を思い出しながらイーピンは思った。とんでもない誕生日になりそうだと。
イーピンは目の前の人物に気付かれないようにそっと溜息をついた。だが。
「なんで溜息なんかついてるの?」
「ご!ごめんなさい!!」
やはりと言うべきか、すぐに溜息に気付いた目の前の人物はすかさずそこを突いてくる。しまった、とイーピンはビクビクしながら謝った。
「そんなにビクビクしなくても。それより早く開けたら?」
「あ…はい。そうですね」
目の前の人物―雲雀―に促されて、イーピンはもう何個目になるかわからないプレゼントを開けるべく手を出した。
『お誕生日おめでとう。今日とっておきのプレゼント送るから家にいてね』
数時間前、綱吉からそう言われてイーピンは家でプレゼントが届くのを待っていた。
初めて出会った時から綱吉はイーピンに誕生日プレゼントを欠かさず贈った。それはとても素敵なもので、イーピンは毎年楽しみにしていた。
今年は何だろう…そう思っていると、インターフォンが鳴った。やっと来たと思いながら玄関に向かったイーピンは、ドアを開けた瞬間硬直する。
「雲雀さん!?」
「やあ」
それだけ言うと、雲雀はイーピンの許可も得ずにズカズカと部屋に入っていく。
「え?ええ?」と混乱するイーピンに「お邪魔します」と誰かが声をかけてくる。振り返るとそこにはたくさんの箱を持った雲雀の部下の草壁がいた。
草壁はイーピンに向かって微笑むと「ボンゴレの皆さんからの誕生日プレゼントを届けに来ました」と言った。
「これは京子さんからですね。こっちはハルさん」
貰ったプレゼントを一つひとつ確認する。そして気付いた。
「アレ?ツナさんのがない…?」
毎年欠かさずくれるのに…と落胆する。すると。
「ああ。沢田綱吉のプレゼントなら僕が預かってるよ」
「へ?」
イーピンがマヌケな声をあげて振り返ると、雲雀はポケットの中から封筒を出してイーピンの目の前に差し出す。
差し出された封筒を呆然と見つめていると「早く受け取ったら?」と雲雀が言う。
慌ててイーピンは封筒を受け取ると、急いで封を開けた。そして中身を見て目を瞠る。
『大学受験に頑張ってるイーピンに、俺からの誕生日プレゼントだよ』
もしかして…とイーピンは顔を真っ青にして雲雀を見た。
いつもと違うイーピンの様子に雲雀も不思議そうに首を傾げる。
「どうしたの?」
「雲雀さん。今日、何で皆さんからのプレゼントを雲雀さんが持ってきたんですか?別に郵送でもいいと思うんですが…?」
「ああ。沢田綱吉が任務だって言ってね。最初はイヤだって言ったんだけど、断ったらしばらく大きな任務はさせないって言うから」
「プレゼントを持っていくことが任務ですか?」
「そう。別に彼に従ってるわけじゃないけど、任務が来ないと僕が退屈するからね。だから今回君のところに来たわけ…って聞いてる?」
雲雀がイーピンに目を向けると、イーピンは両手で頭を抱えて唸っていた。
(ツナさんのバカああ!こんなのプレゼントじゃありません!!心臓に悪いです!!!)
半泣き状態のイーピン。そんなイーピンを見て雲雀はそっと呟いた。
「別に任務じゃなくても君に会いに行くつもりだったけどね」
だが雲雀の言葉はイーピンには届かなかった。
雲雀は小さく溜息をつくと、再びポケットに手を突っ込んだ。
「これ、僕から」
「え?」
コトリと小さな音をたてて、雲雀はテーブルの上に長細い箱を置く。
瞬きをすることを忘れてイーピンは箱を見つめた。その様子に雲雀は呆れながら口を開いた。
「僕からの誕生日プレゼントは受け取れないの?」
「そそそそんなことありません!ありがとうございます!!」
イーピンは急いで箱を手に取ると、付いていたリボンを解いた。
雲雀がここに来たことだけでも驚いているのに、雲雀自身がプレゼントだとか、貰えるとも思ってなかった雲雀からのプレゼント等でイーピンの頭は大混乱していた。
雲雀からプレゼントと言われてすぐに反応できなかったのもそのせい。
せめて草壁が残っていたら…と思う。草壁はプレゼントの山を置いていくとすぐに出て行ったのだ。彼がいればもう少し落ち着いていられたかもしれない。
そんなことを思いながら、イーピンは箱を開けた。そして大きな目を更に大きく見開いて雲雀を見た。
雲雀はニッコリと微笑むと、イーピンが開けた箱から中身を取り出してイーピンの背後に回る。
「よく似合ってるよ」
そう言って満足気にイーピンの胸元を見つめる雲雀。そこにはシンプルなデザインのネックレス。小さいけれど真っ赤なルビーが付いていた。
それを聞いて、ハッと我を取り戻すイーピン。側にいた雲雀の腕を取って青ざめながら言った。
「こんな高価な物頂けません!」
「何?僕のプレゼント受け取れないって言うの、君」
「そうじゃなくて!こんな高価な物をいただく理由が私にはありません」
「あるよ。僕、君のこと気に入ってるから」
「………え?」
一瞬、イーピンの思考が止まる。
「君のこと気に入ってるから、プレゼントを贈るのは当たり前だと思うんだけど」
サラリと告げる雲雀。ようやく頭が回り始めたイーピンは顔を真っ赤に染め、雲雀に向かって叫んだ。
「気に入ってるって!?」
「ん?そのままの意味だけど?君は小さい頃から強かったからね。僕と同じ種類の人間だと思ったからさ。だから気に入ってる」
「……はい?」
「君さ、殺し屋引退もったいないよね。大学受験なんてやめて殺し屋復帰したら?」
「えっと………」
(もしかして、気に入ってるというのは『殺し屋』としての私?)
イーピンはガックリと肩を落す。もしかして…と甘いものを考えていた自分が恥ずかしくなってきた。雲雀がそういうことに一番縁遠い人だったことを改めて思い知る。
どうしたんだと不思議そうに自分を見つめてくる雲雀に、とりあえずお礼を言わなくてはとイーピンは顔をあげた。
「では、ありがたくいただきます」
「あ。あともう一つあるんだよね」
「もう一つ?」
イーピンは首を傾げる。すると雲雀はテーブルの上に箱を置いた。
「これってケーキですか?」
「そう。誕生日ケーキ」
「わぁ!ありがとうございます!!さっそく食べてもいいですか?」
「どうぞ」
甘いものに目のないイーピンはさっそくキッチンに向かって二人分の皿とフォークを持ってくる。「今、コーヒー淹れてますから」と言いながら。
箱を開けて出てきたケーキを見てイーピンは嬉しそうに微笑む。中には生クリームたっぷりのイチゴのケーキ。
「ホールサイズとか一人で食べれません」
ニコニコと笑いながらケーキを切るイーピン。丁寧にケーキを切る様子をジッと雲雀は見つめる。
均等に切れたケーキの一つを皿にのせようとした時だった。
「そのケーキ、僕が作ったんだよね」
「ふわぁっ!!」
「………何やってるの?」
突然の爆弾発言に驚いてケーキを落したイーピンを雲雀が訝しげに見る。
落ちたところが運よく皿の上だったので事なきを得たが、イーピンはそれより気になることがあって雲雀に尋ねた。
「雲雀さん。今『僕が作った』って言いました?」
「言ったけど?沢田綱吉に無理矢理作らされたんだよね。誕生ケーキがないとおかしいって。でも、何で僕が作らなきゃいけないんだろう…」
ニコニコ笑顔で言われて即断ったが、有無も言わさない雰囲気で綱吉に押し切られて作ったらしい。京子とハルに扱かれながら。
その時の光景が目に浮かんで、イーピンは申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
(ツナさん。こんな心臓に悪いプレゼントはもうやめてください)
ハァ…と溜息をつきながら、とりあえずケーキ…ともう一つケーキを取ろうとした。すると。
突然、雲雀に手首を掴まれたイーピン。不思議に思って雲雀を見ると。
「指にクリームが付いてる」
「あ。さっき落した時に触っちゃったんですね」
ティッシュ…とイーピンが立ち上がろうとした時。
―ペロリ―
指に生温かい感触がしたと思って目を向けると、雲雀がイーピンの指に付いたクリームを嘗め取っていた。
「!?」
「あまり甘くなくて丁度いいね。せっかく作ったんだから僕も食べようと思って甘さ控えめにしてみたんだよね」
チュクリともう一度イーピンの指を嘗めて一人納得する雲雀。
イーピンは顔を真っ赤にし、目に涙を溜めて叫んだ。
「雲雀さんのばかああああ!!!」
雲雀さんもツナさんも、誕生日を祝ってくれてるとは思えません。
Buon Compleanno I-Pin !!
遅れてごめんよ、イーピン(´V`)でもオイラ頑張った…!
今回のお話は二人は付き合ってません。お互い気にはなっていますが、雲雀さんが自分の気持ちに気付いてません(笑)
この後、紆余曲折があって二人はくっつけばいいと思ってます°+(*´∀`)b°+°
ツナからのとっておきのプレゼントはそのまま「雲雀さん」です。
なかなか発展しない二人のために…と考えたプレゼントはとんでもないことになりました☆
実はこの指を嘗めるネタ。お繭さんから提供していただいたものです(笑)
私たち、どんだけ嘗めるの好きなんだろうね爆笑!
というわけで、ネタ提供とこの前のオフ会のお礼にお繭に差し上げたいと思います。
いらなかったらゴミ箱にポイしてやってくださいww
最後に。イーピンお誕生日おめでとう\(*´∀`*)/
こちらの作品は繭様のみお持ち帰りです。
up 08.11.29
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