あなたがこれを買ってきてくれたと思うと…私はあなたに大切にされているのかな…なんて思ってしまう。
大切にされてると思ってもいいですか?
キラキラと輝きを放つ苺が乗った生クリームたっぷりのケーキに、チョコレートがかかったケーキ。他にはプリンにシュークリーム、抹茶のケーキ。
それらが入ったケースを目を輝かせて見つめるイーピン。その横で雲雀が呆れたようにイーピンを見つめていた。
「………いい加減、買うか買わないか決めてくれる?」
「あ!すみません!!行きましょう」
10分近くケーキ屋の前にいた。さすがに居た堪れなくなった雲雀がイーピンに声をかけた。
イーピンは恐縮したように雲雀を見ると、急いでその場を離れた。
「買わなくて良かったの?」
「はい。今日の買い物はノートとペンですから。それに早く帰らないと………」
「雲雀さん、人ごみは苦手でしょう?」とイーピンは言った。全くもってその通りなので、雲雀はコクンと頷いた。
二人は今、近くのショッピングモールに来ていた。
久しぶりに雲雀は休暇を貰った。だから、日本にいる恋人に逢う為に帰国した。
何の連絡も入れずに帰国したので、玄関に雲雀が現れてイーピンはかなり驚いていた。
ちなみに雲雀も少し驚いていた。イーピンが今から出掛けますと言わんばかりの格好をしていたから。
『どこに行くの?』
「ただいま」を言うのも忘れて雲雀はイーピンに尋ねた。イーピンも「おかえりなさい」を言うのを忘れて答えた。
『ノートとペンがなくなったから買いに行こうと思って………』
そしてそのまま雲雀はイーピンについて行った。なんとなく。
「雲雀さん…私のアパートで待っててくれても良かったのに。長時間飛行機に乗ってて疲れてるんじゃないですか?」
「別に疲れてないよ。それより久しぶりに君に会ったのに、一緒にいられないなんてつまらない」
そう言って、雲雀は妖しげな微笑を湛える。イーピンは咄嗟に後ろに下がった。
「何逃げてるの?」
「え………なんとなく?」
あはははは…とカラ笑いするイーピンに雲雀は溜息をつきながら尋ねた。
「ケーキ…買わなくて良かったの?」
「ほぇ?ああ!いいんです。今日はノートとペンを買いに来ただけだし。無駄なお金は使いません」
「苦学生ですから!」と続けるイーピンに雲雀が「君ね…」と言いかけた時。
「それに京子さんやハルさんが一ヶ月に一度、自分のご褒美で買う方が美味しいと教えてくれました!!」
ニコニコと楽しそうに言うイーピンを見て、雲雀は言おうと思っていたことが言えなくなってしまった。
仕方がないので違うことを言った。
「あんな甘い食べ物…何がいいのかわからないよ」
「雲雀さんは甘いもの苦手ですもんね。でもチーズケーキとかは甘くないですよ?ちなみに私はミルフィーユが好きです!!」
「ふぅん」
そんな他愛のない話をしながら、二人はアパートに向かって歩いた。―――それが二ヶ月前の話。
「ただいま」
「…おかえりなさい」
いつものように雲雀は何の連絡も入れずにイーピンに逢いに来た。
前回同様、突然の訪問に驚いたイーピンだったが、今回は満面の笑顔で雲雀を迎えた。
雲雀もそれに笑顔で応えると、まるで自分の部屋であるかのようにイーピンの部屋に入った。それを咎めることなくイーピンも後に続く。
「そうだ」
突然雲雀が立ち止まる。イーピンは首を傾げて雲雀を見つめた。
すると雲雀はイーピンの目の前に小さな箱を差し出した。イーピンは咄嗟にそれを受け取った。
「お土産」
「お土産ってコレ………ケーキですか?」
「そう。この前日本に帰った時、君が食べたそうにしてたから」
「えっと…コレ、雲雀さんが買ったんですか?」
「僕以外に誰が買うの?」
「そうですよね!あの…ありがとうございます!」
雲雀が自分のためにケーキを買ってくれた。それだけで嬉しくて泣きたくなる。
イーピンは箱を持ち上げて嬉しそうに微笑んだ。雲雀もイーピンの嬉しそうな表情に満足して思わず微笑む。
「ところで…食べないのかい?」
「あ!今お茶の準備しますね。雲雀さんは座って待っててください」
「そうさせてもらうよ」
雲雀はそのままソファに座った。イーピンはケーキの入った箱を持ってキッチンに向かう。
お茶を淹れるためのお湯を準備しながらケーキの箱を開ける。中に入っていたケーキを見てイーピンは目を瞠った。そのまま雲雀の元に向かう。
「雲雀さん!」
「………何?」
ソファに寝転んでいた雲雀が顔をあげる。イーピンは頬を染め、興奮気味に言った。
「覚えててくれたんですか………?私の好きなケーキ」
「君のことなら何でも覚えてるよ」
「チーズケーキのことも………」
「君のオススメだがらね。食べてみる価値はあるかな…と思って。美味しくなかったら咬み殺すよ?」
雲雀はそれは楽しそうに笑った。悪戯を思いついた子どものように。
いつもならその笑顔に警戒して逃げるイーピンなのだが、今日はそんな気分ではない。むしろ………
「いいですよ。チーズケーキ、美味しくなかったら咬み殺してください」
と、笑顔で答えた。それに一瞬目を瞠った雲雀だったが、ニヤリと笑った。
「この前言おうと思ってたんだけど」
「何をですか?」
二人でケーキを食べていると、雲雀が徐に口を開いた。
「僕の前では遠慮なんてしなくていいから」
「はい?」
言っている意味がわからず、イーピンは困惑する。
雲雀はケーキを置き、紅茶の入ったカップを手に取りながら言った。
「ケーキでも何でも欲しいものがあったら言って。君は遠慮しすぎなんだよ」
思わぬ言葉にイーピンは絶句する。そんなイーピンを見て、雲雀は困ったように笑った。
「恋人から何もおねだりされないのも辛いんだよ」
「………わかりました。次からはおねだりしますね」
こんなに幸せでいいのかな…と思いながら、イーピンは微笑んだ。雲雀の優しさに喜びを感じながら。
「ところで雲雀さん。チーズケーキ美味しいですか?」
「あまり甘くなくて食べやすい…美味しいね」
「良かった!!」
雲雀が美味しいと言ってイーピンは喜ぶ。今度奈々さんにチーズケーキの作り方を教えてもらおうと思う。
すると雲雀が残念そうに呟いた。
「おかげで君を咬み殺せないね」
一瞬驚いたイーピンだったが、花が綻んだように微笑むと雲雀の耳元に口を持っていき、囁いた。
「美味しくても…今日は雲雀さんに咬み殺されたいです」
―――だってあなたが私を大切に思ってくれているから。それが嬉しいから―――
これでも一応健全なつもりです;;;
「病葉」の繭さんに相互のお礼ということで書いたんですが………
超絶駄文だ;;;どうしよう!!ごめんなさい!繭さん(T_T)
リクは10年後ヒバピンということで頑張りました。
前回がアレだったので、今回は健全に!を目標に頑張ったのですが………
うん。何気に妖しいこと言ってます(爆)
イーピンに対する『咬み殺す』=手を出す ヤバイな…私(汗)
繭さん。こんな駄文でよろしければお納めください。
煮るなり焼くなりゴミ箱行きにするなりお好きなように!!返品も可です!!
こちらの作品は繭さんのみお持ち帰りです。
up 08.01.09
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