淋しい時は側にいてあげる。その小さな手をずっと握っててあげる。


Io l'amo



困ったな…と綱吉は思った。目の前にいる自分の部下であり、守護者の一人である雲雀があからさまに怒っていたからだ。
綱吉は溜息をつくと、徐に口を開いた。

「………雲雀さん」
「何………?」
「気持ちはわかります。早く帰りたいんでしょう?だったらその不機嫌オーラを消して、さっさと報告を済ませてください」
「僕は報告してるよ。それを邪魔してるのは………」

そこまで言って雲雀は口を閉ざすと、チラリと綱吉の横を見る。

「君の隣にいる煩い男がいちいち口出しするから進まないんだよ」
「何だと!?大体お前の報告は簡潔すぎて、逆に分かり難いんだ!」
「獄寺くん!!」

指摘され、雲雀に掴みかかろうとする獄寺を綱吉が制する。これ以上拗らせないでくれと思いながら。
う…と唸る獄寺を横目で見てから、綱吉は本日一番大きな溜息をついた。

「わかりました。後の報告は報告書に纏めるということで、今日はもう帰っていいですよ」
「………そう。わかった」

綱吉の言葉に雲雀は頷くと、そのまま立ち上がって部屋を出て行った。
雲雀が出て行くと、獄寺が叫んだ。

「いいんですか!十代目!!今回の任務は重要だから、きちんと報告させるべきだってリボーンさんが言ってたじゃないですか!?」
「んー…でも、雲雀さんならちゃんと報告書に纏めてくれるよ。そういう面では真面目だから」
「ですが……!」
「いいんじゃね?一ヶ月以上かかるだろうと言われてた任務を三週間で終わらせたんだし」

言い募る獄寺を止めたのは山本だった。山本は、笑いながら言った。

「新婚ホヤホヤで、可愛い奥さんが待ってるんだ。さすがの雲雀も早く家に帰りたいだろ?」



ボンゴレ本部から雲雀のアジトは繋がってるとはいえ、そこそこ距離はある。雲雀はイライラしながら歩いた。
ようやく一ヶ月という時だった。今回の任務の話が来たのは。しかも少し面倒で任務完了までに一ヶ月以上かかるだろうと赤ん坊―リボーン―に言われた。
雲雀は即断った。そんな日数がかかる仕事、今はしたくなかったから。しかし、そんな雲雀を説得したのは他でもない彼女だった。

『私は大丈夫ですから。行ってください。皆さんに迷惑をかけちゃダメですよ…?』

穏やかに微笑まれたら、雲雀には何も言えなかった。



ようやくアジトに繋がる入り口に着き、雲雀は中に入った。
モニターで自分が帰ってきたことはすぐに伝わるだろう。きっと彼女が迎えに来てくれる。そう思いながらアジト内の通路を歩いていると、現れたのは思い描いていた人物ではなかった。

「おかえりなさい。恭さん」
「………哲」

雲雀は不服そうに草壁を見る。そんな雲雀を見て草壁は苦笑した。

「早かったですね。もう少しかかると思っていたのですが」
「早く終わらせた。それより、哲」
「はい?」
「………イーピンはどうしたの?」

すると草壁は困ったように「実はですね………」と口を開いた。



何か冷たいものが額に触れた。その瞬間、イーピンは気持ちいい…と思った。

綱吉が「もうすぐ帰ってくると思うよ」と言ったのは三日前だった。嬉しくて側にいた草壁に「もうすぐ帰ってくるんですって!」と叫んでしまった。
その次の日。イーピンは高熱を出して寝込んでしまった。

『早く治したいのなら、静かに寝ててください』

草壁が苦笑しながら言うのを、イーピンは恥ずかしく思いながら聞いていた。
あの人が帰ってくる。それを聞いただけで嬉しくて、何を作ってあげよう、何処に行こうなどと寝るのを忘れて考えていたら、おもいっきり風邪をひいてしまった。

(一番に、あの人を迎えに行きたかったのに………)

そんなことを思っていると、また何か冷たいものが額に触れた。今度は優しく前髪を撫でていた。その心地よさにもっと触ってほしいと思った。
同時に誰が触っているのだろうと思う。熱を出したその日、看病に来てくれた京子だろうか?それとも「今度は私が行きますね」と言ってくれたハルだろうか?
どちらにしても、看病に来てくれたのだから礼を言わなくては。そう思ったイーピンはゆっくり目を開けた。

「ごめん。起こした?」

耳に届いた声に、イーピンは目を瞠る。首を横に動かすと、そこにいたのはずっと帰ってくるのを待っていた愛しい人。

「夢…見てるのかな……?」
「夢じゃないよ」

ボーっと自分を見つめるイーピンに雲雀は苦笑する。夢じゃないとわからせるために、そっとイーピンの額に口づけた。

「本物だ………」

ほわんと嬉しそうに微笑むイーピン。雲雀も微笑み返した。

「はしゃぎすぎて熱出したって?」
「う…草壁さんが言ったんですか?」

恨めしそうに雲雀を見るイーピン。雲雀は小さく溜息をついた。

「はしゃがなくても帰ってくるんだから………」
「だって………」
「だって、何?」

呆れたように見つめてくる雲雀の視線から逃れるように、イーピンは布団を鼻の辺りまで引き寄せる。

「だって……淋しかったから。帰ってくるって聞いて、嬉しかったんです」

言ってイーピンは布団の中に顔を埋める。雲雀は驚きのあまり目を瞠った。
あの時は迷惑をかけるなと言っていたけれど、本当は行って欲しくなかったのだと初めて知った。自分のことより他人のことを優先する彼女らしい行動だと雲雀は思う。
でも、自分が関わる時だけはワガママを言って欲しい。そう思いながら、雲雀はイーピンの布団をそっと下げる。

「淋しい思いをさせたね。暫くはここにいるから。君の側に」

その言葉に、イーピンは嬉しそうに頷くと、そっと手を伸ばして雲雀の手を握った。

「イーピン?」
「あの…お願いがあるんですけど………」
「何だい?」
「手を……握っててください」
「お安い御用だよ。でもその前に僕のお願いも聞いてくれる?」

お願いとは何だろう…とイーピンは首を傾げる。雲雀はニッコリ微笑むとイーピンの手を優しく握り返して言った。

「まだ『おかえり』って言われてないんだけど?」
「あ………」

イーピンは空いてる手を口元にもっていく。申し訳なさそうに自分を見つめるイーピンを安心させるように、雲雀はそっと額を撫ぜる。
それに安心したのか、イーピンはゆっくり口を開いた。

「おかえりなさい。恭弥さん」
「ただいま。イーピン」

雲雀はそっと、イーピンの唇にキスをした。







HAPPY BIRTHDAY!!! うなちゃん\(*´∀`*)/

お誕生日からかなり経ってのUPで申し訳ありません;;; 遅筆でごめんね…orz
いつも強奪したり、リクしてるのに、自分はお返しできてなくてホント申し訳ない;;;

なので頑張ってみました。お誕生日リク!
新婚ヒバピンに草壁付きというリクでしたが、リクに沿ってるとは思えない。
そしてヒバピンで新婚って初めて考えたんですけど難しいですね(笑)
「恭弥さん」ってなかなか呼ばせなかったのはワザとです(´V`)

こんな駄文がお誕生日でホントゴメンね;;;ゴミ箱に捨ててもいいですからね〜ww

こちらの作品は神舞羽菜様のみお持ち帰りです。


up 08.08.31


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