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『君が着飾るのは僕の前だけにして』


綺麗になりたいと思ったら



いつものように店の前に車を停め、ヒバリは店の中に入った。

「今日は君一人なのかい?」
「あ…ヒバリ様。いらっしゃいませ」

店に入ってきたヒバリを見て、小さな仕立て屋『薔薇色』ローズ・カラーズのお針子、イーピンは作業をやめて立ち上がった。

「さっき夕飯の買い物に出かけたので、もうすぐ帰ってくると思うのですけど…」
「ふぅん。そうなんだ」

ヒバリは素っ気無く答えたが、イーピンと二人きりなのが内心、嬉しくてたまらなかった。
すると、イーピンがはにかみながらヒバリに尋ねた。

「ヒバリ様。コーヒーにしますか?それとも紅茶にしますか?」
「ああ…そうだね。君の淹れた紅茶は絶品だから、紅茶をもらおうか」
「え…あ…ありがとう、ございます」

サラリと笑顔で誉められて、イーピンは顔を真っ赤に染めるとそのまま逃げるように奥に向かった。そんなイーピンを見てヒバリは苦笑する。
信頼されてはいると思う。出逢った時より会話は続くようになったし、何より笑顔を見せてくれるようになった。
それでも時々、イーピンが遠慮がちな行動を取るのは、自分が貴族で彼女が労働者階級の娘であることを気にしているからだろうか…と思う。

(そんなこと…気にしなくてもいいのに)

そう思ってすぐ、ヒバリは苦笑した。
昔は身分の低い者のことなど何とも思っていなかったのに、今では小さな仕立て屋の主である少女を大事に思っている自分がいる。変われば変わるものだ。
フッと紅茶の匂いがして、ヒバリは顔を上げた。するとイーピンがワゴンに紅茶と焼き菓子を乗せてやってきた。



「ごめんなさい。あと少しで完成するので、ちょっと針仕事をしてもいいですか?」

テーブルに紅茶と焼き菓子を置いたイーピンは、申し訳なさそうにヒバリに尋ねた。

「別に構わないよ」
「ありがとうございます」

ヒバリが答えると、イーピンはニッコリと微笑んで礼を言うと、ヒバリの向かい側の椅子に向かった。
そこにはヒバリが来る前から作業していたのか、布や裁縫道具が置いてあった。イーピンはそれを手に取ると、慣れた手つきで針を動かし始めた。
その様子を紅茶を飲みながら見つめていたヒバリは、ボソリと呟いた。

「それはドレスではなさそうだけど、何を作ってるんだい?」

ドレスを作ってるにしては布が少なすぎる。その上、イーピンが今作っているものはとても小さい。
一体何を作っているのだろうとヒバリが首を傾げると、イーピンは少し目を瞠ってヒバリを見た。

「何?」
「あ…いえ、ヒバリ様が私の仕事のことを聞いてくるなんて思わなくて」
「そう?気になるよ。だって君の作るドレスが好きだからね」

ヒバリがそう言うと、イーピンは顔を真っ赤にして俯いた。初々しいイーピンの反応に思わず笑うヒバリ。

「で?何を作ってるの?」
「この前、仕立てたドレスの布とレースが余ったので、もったいないし、コサージュを作ってみようと思って」

「余りで作ってるから売り物にはしませんけど」と苦笑しながら、イーピンは再び手を動かし始めた。その様子をヒバリは黙って見つめた。



「できた」

イーピンは出来上がったコサージュを自分の手のひらに乗せた。
布もレースも上質の物のため、綺麗に仕上がってイーピンは満足気に微笑んだ。
その時、突然横から手が出ていて、イーピンの手のひらにあったコサージュがスッとさらわれた。

「上手にできてるね」
「ヒバリ様…突然取り上げないでください。ビックリしました」

ほんの少しヒバリを睨みつけながらイーピンは言ったが、ヒバリはまじまじとコサージュを見つめていて話を聞いていない。
もしかしてコサージュを気に入ったのだろうか…とイーピンは思った。

「ヒバリ様。コサージュを気に入られたのならお持ち帰りになっても結構ですよ?妹……」
「コレ、君に似合いそうだね」
「………え?」

ヒバリはイーピンが作ったコサージュをイーピンの胸元にそっとあてた。

「うん。似合ってる。これって白い薔薇でしょう?無垢な感じがして君にとっても合ってるよ」
「そんな…私には似合いませんよ」

着飾ろうなんて思ったこともない。注文をしてくれたお客様が綺麗になるのは素敵だと思うが、自分は綺麗になりたいとは思わない。
綺麗になる資格がない。綺麗になりたいと思ったら終わりな気がしてならない。

黙り込んだイーピンを見て何かを察したのだろう。ヒバリはイーピンの胸元にあてていたコサージュをそっとイーピンの手のひらに乗せた。

「無理にとは言わないけど、いつか付けてみたらいい。きっと似合うから」
「そんなこと……」
「似合うよ。だからいつか、このコサージュと君に似合うドレスを作って僕の前で着飾ってみてよ」

ニッコリと笑うヒバリ。イーピンは何と答えてよいかわからず、ただジッとヒバリを見つめた。

「そんなに気負わなくてもいいから。とにかくソレは君が大事に保管しといて」
「あ…はい」

気が付けばイーピンはそう答えていた。
イーピンの答えに満足したのか「そろそろ屋敷に戻るよ」と言ってヒバリは立ち上がった。そのまま入り口に向かう。
急いでイーピンはヒバリの後を追う。すると、入り口の扉に手をかけたヒバリが突然振り返った。

「言っておくけど」
「はい?」

何だろうと首を傾げるイーピンに、ヒバリは妖艶に微笑んだ。

「君が着飾るのは僕の前だけにして」

そう言って、ヒバリは店から出て行った。
しばらく呆然と立ち尽くしていたイーピンだったが、車のエンジン音が聞こえた途端、我に返った。
走り去っていく車を見つめながら、イーピンは手のひらのコサージュをそっと握った。

「いつか…綺麗になりたいと、心から思ったら」



ドレスを着て、このコサージュを付けて、貴方に逢いに行きます。







お誕生日と200000HITおめでとう!おしず!!

と言いながら、お誕生日をはるかに過ぎてからのUPで申し訳ない;;;

おしずのリクが、某小説のパロだったので頑張って制作してみました。ですが…
小説読んでもこの頃の時代背景ってわかんないや☆って思いました。
とりあえず、この時代ってコサージュあるよね?とか思いながら制作したという。原作読み返せよ、自分!
雲雀さんとイーピンが偽者ですみません!許して下さいm(__)m

駄文だけどおしずさん、こんなのでよろしければ煮るなり焼くなり……返品いつでも承り〜♪

こちらの作品は青井しずか様のみお持ち帰りです。


up 09.02.01


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