目の前の光景を見た瞬間、俺は執務室のドアを閉めてしまった。
珍しいモノを見てしまった
深呼吸をし、俺はもう一度ドアを開ける。先程と変わらない光景が目の前に広がり、思わず溜息をついてしまった。
「何やってんだ?ツナ」
「リボーン………」
執務室のソファに座って優雅にエスプレッソを飲む家庭教師が、不思議そうに俺を見つめてくる。俺はリボーンに尋ねた。
「これは一体、何?」
目の前に広がる光景。それは酔いつぶれて眠っている山本とお兄さんとランボ。そしてお酒の入ったコップを持ってケラケラと笑っているイーピンだった。
「ああ、それはだな」
するとリボーンは楽しそうに事の成り行きを説明しはじめた。
リボーン曰く。突然、山本が「イーピンたちは成人式を迎えたのだから、お祝いに酒でも飲もう」と言い出した。
それを聞いたお兄さんが賛同して、ランボとイーピンに無理矢理お酒の入ったコップを渡した。
ランボは二杯程飲んでダウンしたが、イーピンは何杯飲んでも酔うことがなく。
そんなイーピンに山本とお兄さんが対抗心を燃やして、いつの間にか飲み比べになってしまい………結果。
「イーピンより先に自分達がダウンしちゃった…と?」
「簡単に言えばな。でも、イーピンも酔ってしまってるけどな」
だからこの勝負は引き分けだ…と楽しそうに笑うリボーンを見て俺はまたしても溜息をついた。そうなる前に止めてくれればよかったのに…と。
せめて獄寺君がいてくれたらここまでは…と思ったけど、生憎獄寺君は任務中。ストッパーである彼の存在が、今日ほど大事なものだとは思わなかった。
とりあえず、イーピンだけでも部屋に戻そうと思った時だった。
「何なの、これは」
「雲雀さん。早いですね、もう仕事終わらせてきたんですか?」
振り返ると、獄寺君とは違う任務についていた雲雀さんが眉間に皺を寄せて執務室内を見渡していた。
俺は苦笑して執務室の状況を雲雀さんに説明しようと立ち上がった……が。
「雲雀さん〜おかえりなさ〜い!!!」
俺より先に酔っ払ったイーピンが雲雀さんに抱きついた。その時、雲雀さんの目が一瞬驚いたように見開いたのを俺は見逃さなかった。
雲雀さんは楽しそうに首に纏わりつくイーピンの背をポンポンと叩くと、今まで聞いたこともないような優しい声音でイーピンに尋ねた。
「何でこんなに酔ってるの、イーピン?」
「酔ってなんかないですよ〜」
「………充分酔ってるよ」
ケラケラと笑うイーピンを呆れたように見つめる雲雀さん。でもその瞳はとても優しくて、今度は俺が驚きのあまり目を見開いてしまった。
すると雲雀さんが突然俺の方を見た。その瞳は先程とは違って静かな怒りに満ちていて、俺は身震いしてしまった。
「何でイーピンはこんなに酔ってるの?」
「あ!えっと、それは、その…山本が成人祝いにって飲み始めたのがいつの間にか飲み比べになったらしくて…俺もさっきこれを知って驚いたというか」
「ふぅん」
執務室のソファで大の字になって酔いつぶれている山本を睨みつける雲雀さん。
…というか、お兄さんやランボのことも睨みつけている。明日この三人は雲雀さんにボコボコにされるんだろうな〜。自業自得だけども。
でもランボも被害者だよなーとは思ったけど、口を出すと俺にまで被害がきそうだから黙っておくことにした。
「とりあえず、イーピンは連れて帰るから」
「あ、はい。どうぞ連れて帰ってください」
ヒョイっとイーピンをお姫様抱っこしてそう告げる雲雀さんに俺はニッコリと笑って答える。とりあえず雲雀さんが怒り狂って暴れなかったので良かった。
俺はホッと息をつき、雲雀さんはイーピンを抱えて執務室から出ようとした。その時。
「雲雀さ〜ん」
「何だい?」
雲雀さんの腕の中のイーピンが突然彼を呼んだ。先程と同じように、雲雀さんは優しい瞳と声音でイーピンに応える。すると。
「雲雀さんがいなかったから、私寂しかったです〜」
お酒が入って赤くなった頬、潤んだ瞳でニッコリと微笑みながらそう言うと、イーピンは雲雀さんにキスをした。
突然の出来事に俺は絶句。隣で一部始終を見ていたリボーンもカップを持つ手が止まっていて。
何よりキスをされた雲雀さんが、うっすらとだけど頬を染めて驚いていた。
「えへへ〜キスしちゃった〜」
嬉しそうにイーピンは呟くと、そのまま雲雀さんの腕の中で眠ってしまった。
何とも言えない沈黙が流れる。どう声をかけていいかわからず黙っていると、雲雀さんが溜息をついた。
「沢田」
「はいぃっ!!!」
「悪いけど、両手塞がってるからドア開けてくれない?」
「あああ!了解しました!開けさせて頂きます!!!」
俺は急いでドアを開けた。雲雀さんは小さな声で「悪いね」と呟くと夢の世界の住人となったイーピンを大事そうに抱えて執務室から出て行った。
去り際にチラリと見えた雲雀さんの耳がほんの少し赤くて、またしても俺は驚かされてしまった。
「ツナ」
「何?リボーン」
二人を見送って執務室のドアを閉めると同時に、リボーンが俺に声をかけてきた。俺が首を傾げると、リボーンはそれは楽しそうにニヤリと笑った。
「今日は珍しいモノをたくさん見れて、面白かったな」
リボーンのその言葉を聞いて俺は苦笑してしまった。確かに珍しいモノをたくさん見れた。
あの雲雀さんでも、イーピンが絡むとあんなに表情が豊かになるんだな〜とビックリしてしまった。
でも、正直心臓が壊れるんじゃないだろうかってくらい驚かされてしまった。何というか、雲雀さんはやっぱり………
「面白かったけど、やっぱり俺は無愛想な雲雀さんがいいな」
俺にとって雲雀さんは、恐怖の存在だから。優しい雲雀さんなんて違う意味で恐ろしいというか。
でも、イーピンには優しいんだなって改めてわかったからそれは良かったな〜って思ったりもした。
ヒバピンをUPするのはイーピンの誕生日以来…です、ね;;;
UPしたいなーとは思ってたのですが、ネタが、ネタが…浮かばない……!!!
このお話は最初拍手小咄用に書いていたのですが、予定外の長くなってしまい;;;
もったいないからリサイクルとかしてみました☆(サイトUP用としては短いんですけども)
ツナ視点のヒバピンです。
雲雀さんのイーピンに対する態度が自分とは全く違うので驚いてる…って設定です。
雲雀さんだって人間だから、好きな子から積極的にアプローチされたら照れると思うの!!!
そんなノリで作ったら、短く纏めることができなかったという(´V`)
久しぶりにヒバピンをUPして思ったこと。
やっぱり私はヒバピンが大好きです\(*´∀`*)/
up 10.02.02
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