透き通るような色の白さに、いつも魅せられている。


僕の白い華



3日前のこと。久しぶりに日本に帰ってきていると聞いて、イーピンは雲雀のアジトに向かった。
そこには和服姿で寛いでいる雲雀がいて、イーピンは思わず「おかえりなさい」と抱きついた。
突然抱きついてきたイーピンを嫌がることなく、むしろ彼にしては珍しくうっすらと笑みを浮かべてこう言った。「ただいま」と。
それからずっと、イーピンは雲雀のアジトで過ごしていた。その間、雲雀はアジトで仕事をしたり、うたた寝したりと引き篭もり生活を送っていた。
そんな雲雀の姿に、見かねたイーピンはある提案をした。
「二人で並盛を散歩しませんか?」と。



「外は気持ちいいですね!」
「外がいいならアジトの庭でも良かったんじゃないの?」
「その『外』じゃなくて、アジトの『外』がいいんです」
「ふぅん」

どうでもいいと言わんばかりに返事をする雲雀を見て、イーピンは盛大に溜息をついた。

「もう…!雲雀さんのためにお散歩してるのに」
「僕のために?」

何故?と首を傾げる雲雀に、イーピンはほんの少し眉間に皺を寄せて呟いた。

「だって不健康なんだもの」
「は?」
「だって雲雀さん、ずっとアジトに篭ってるんだもの。偶には外の新鮮な空気を吸わないと頭が腐ってしまいます!」
「別に僕は気にしてないけど…」
「ダメです!人間、日に当たらないと病気になってしまうんですよ!」

そう言って雲雀の腕を掴んでグイグイと引っ張るイーピンを呆れた様子で見つめながらも、偶には出かけるのもいいかな…と思い、雲雀は黙ってついて行くことにした。
並盛を歩くのは好きだし、それに一緒に歩くのが愛しい少女だと思うと、それはそれで楽しいかもしれないと考えた。



しばらく歩いていると、商店街についた。

「商店街、久しぶりなんじゃないですか?」
「そうだね。昔からあまり来てないけど。ここは群れてるヤツが多いからね…咬み殺したくなるんだよ」
「………それだけはやめてください」

思わず雲雀の腕を掴むイーピン。昔から人が群れるのを嫌う彼ならやりかねない。
すると頭上でクスクスと笑う声がした。

「心配しなくても、昔みたいな無茶はしないよ」
「………本当ですか?」
「本当」

クスクスと笑い続ける雲雀だが、イーピンはいまいち信用できないな…と思った。
確かに昔に比べたら落ち着いたのかもしれないが、それでも無茶はしているようで。
先日、イタリアにいる綱吉から「雲雀さんが無茶をして商談がダメになった」とか、獄寺から「勝手に敵対するファミリーに殴りこみに行った」という話を聞いた。
挙句の果てには、二人から「イーピンにイタリアに来てもらって雲雀さんのストッパーになってほしい」まで言われてしまった。
向こうでは相変わらず無茶をしてるんだな…と、イーピンは雲雀を見上げて思わず苦笑した。
その時、太陽の光が目に入り、イーピンは咄嗟に目を瞑った。

「イーピン?」

雲雀が訝しげにイーピンを見つめる。

「あ…すみません。太陽が眩しくって」
「大丈夫?」
「はい」

イーピンは手を翳し、空を見上げた。雲一つない、真っ青な空が広がっている。
気持ちの良い風が頬を掠めて、気持ちのいい季節になってきたな…と空に向かって微笑んだ。

「何笑ってるの?」

不思議そうに尋ねる雲雀。

「いや…初夏だなぁって思って。ちょっと前までぽかぽか日和だったのに、今は眩しいくらいだなぁって」
「確かに初夏だね。でも眩しいとはちょっと違う気がするけどね」
「そうですね…何だか日差しが痛い感じですよね?」

無意識のうちに、イーピンは自分の腕を擦った。
アジトを出る直前、ほんの少し気温が高かったので半袖のワンピースで出かけた。
確かに半袖で充分の気温なのだが、日差しが肌に照りつけて刺す様な痛みを感じる。長袖を持ってくればよかったと、イーピンは少し後悔していた。

「君、長袖着てないよね?」
「へ?」

突然声をかけられて、イーピンはマヌケな声を上げた。そのまま視線を雲雀に向けると、眉間に皺を寄せて雲雀がこちらを見ていた。

「何で長袖を着てないの?」
「え……いや、何か熱かったから半袖でも大丈夫かな〜と思ったんです。でも日差しが強いから長袖持ってくれば良かったかなって思ってます」

えへへ…と苦笑しながら言うのを黙って聞く雲雀。いつもと違う反応にイーピンは困惑する。

「えっと…雲雀さん?」

恐る恐る声をかけると、雲雀がキョロキョロと辺りを見渡し始めた。
雲雀が何をしているのかわからず更に困惑するイーピン。しばらくして「あそこでいいか」と雲雀が呟いた。と同時に、イーピンの手をギュッと握りしめた。

「行くよ」
「え?どこに?」

グイグイとイーピンを引っ張りながら、雲雀は一つの店に入った。そこは女性ものの服や小物を置いている店だった。
雲雀は店の中を見渡すと、とある場所に向かってイーピンを引っ張って行った。

「これがいいかな」

雲雀は商品の中から一つ手に取ると、またしてもイーピンを引っ張ってレジに向かい、それを買って店を出た。
あっという間の雲雀の行動に呆然としていると、雲雀が先程買ったものをイーピンの目の前に差し出した。

「はい」

咄嗟にそれを受け取ったイーピン。困惑しながら袋を開け、中にあったものを出した。

「日傘………?」

オフホワイトの生地に刺繍で小花をあしらっているその日傘は上品な感じで、イーピンは思わず目を瞠った。

「あげる。これを差して歩けば日差しも痛くないんじゃないの?」
「え…でも、申し訳ないです」

イーピンは日傘を雲雀に返そうとした。しかし雲雀がそれを止める。

「いいんだよ。僕が君にあげたいって思ったんだから。それに…勿体無いと思うから」
「勿体無い?」

何が勿体無いのだろうか…とイーピンは首を傾げる。すると雲雀はイーピンの手を取ると、そっとその手の甲に口付けを落とした。

「せっかく白くて綺麗なのに。焼けてしまったら勿体無い」

ドクンと心臓が跳ね上がる。同時にイーピンは顔を真っ赤に染め上げた。
そんなイーピンの様子を見て、雲雀はクスクスと声をたてて笑った。

「昔から、君の透き通るような白い肌が好きなんだよ」
「は、はぁ…」
「魅せられるってのはこういうのを言うんだろうなっていうくらい、君の白い肌をずっと見つめていたこともあるし」
「そ、それは…どうも」
「だから、僕に無断で焼いたりしたら…咬み殺すよ?」

イーピンの耳元でそっと囁く。瞬間、イーピンの体がビクンと跳ね上がった。
その様子に満足しながら、雲雀はもう一度尋ねる。

「で?日傘は使うの?」

イーピンはこれ以上ないと言うほどに顔を真っ赤に染めると小さくコクリと頷いて、手に持っていた日傘を差した。
雲雀はニッコリと微笑むと、イーピンに向かって手を差し出した。

「じゃあ…散歩の続きをしようか?」

イーピンははにかみながら微笑むと、雲雀の手を取った。







紫外線情報を見て思い浮かんだネタ第一弾です(笑)
この時期が一番紫外線が強いんですよね…肌が痛いのなんの;;;
そんなことを考えていたら、こんなネタが浮かびました(´V`)
雲雀さんはイーピンの白い肌を気に入ってて、焼けるのを断固阻止しそうだな…と思ったのですが。
ちょっと思っていたのとは違う内容になってしまいました☆
これはこれでいいかな〜とは思ってますが(´∀`)
微なエロに走らないようにだけは頑張りました(笑)

他のカプでも似たようなネタでお話考えています。
多分雲雀さんが一番幸せです(爆)

up 10.05.15


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