拍手小咄 4


無意識 <イチルキ>



昨日、一心が患者から貰ったお菓子の詰め合わせ。その中に、チョコレートがあった。

「お?これでチョコは最後だな」
「待て!!」

一護が箱から最後のチョコを取り出そうとした時、横からルキアの手が伸びてきた。

「貴様、昨日からいっぱいチョコを食べてるではないか。そのチョコは私に譲れ」
「……そんなもの、食べたもん勝ちだろう」

そう言って、一護はチョコに向かって手を伸ばす。するとルキアが思いっきり一護の手を叩いた。

「いってぇ!お前!!叩くことねぇだろう!!!」
「貴様が私の言うことを無視するからだ!!」

一護はルキアを睨みつけるが、逆に頬を膨らませ、顔を真っ赤にしたルキアに睨み返される。
そのうえ………

「私だってチョコが好きだが、貴様が美味しそうに食べてるから遠慮してしまったのだ」

などと言われてしまったら、文句を言うことができない。一護は「う…」と唸る。
確かに昨日からチョコしか食べてなかったな…と一護は反省した。

「遠慮させて悪かったな……コレ、やるよ」

箱から最後のチョコを取り出し、一護はルキアの手にのせる。するとルキアは嬉しそうに微笑んだ。

「ありがとう。一護」

照れくさそうに頬をかきながら、一護はコクンと頷く。
その嬉しそうな笑顔を見れただけでもいい…と思いながら。

「アレ?お前さ、俺から取り上げる程チョコ好きだったけ?」

ふと疑問に思い、一護はルキアに尋ねた。
ルキアは「ああ」と言いながら笑った。

「貴様が好きな食べ物だから。私も食べていたら好きになったんだ」

パクリと最後のチョコを口に入れるルキア。
そのルキアに気付かれないように、そっと一護は溜息をついた。


彼女はどうして無意識に自分が喜ぶことを言うのだろう………



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ルキアに弱すぎる一護のお話(笑)






ハンバーグ <ヒバピン>



今日もか…と雲雀は溜息をついた。
雲雀の溜息の原因は、目の前にいる年の離れた可愛い恋人。
彼女が嫌いになったわけではない。むしろ日に日に愛しさは募っているくらい。しかし、今は。

「イーピン…」
「なんですか?雲雀さん」

鼻歌を歌いながら機嫌よく作業していたイーピンは、雲雀に呼ばれて手を止める。
キラキラと目を輝かせて自分を見つめる恋人から目を逸らしたいと思いながら、雲雀は口を開いた。

「何してるの?」
「何って…夕飯の準備ですよ?」
「今日のメニューって………」
「ハンバーグです!!」
「あのさ……確か昨日も………」
「昨日はデミグラスハンバーグだったから、今日は和風ハンバーグです!!」

楽しそうに答えるイーピンに、雲雀は引き攣った笑いで応えた。
四日前。初挑戦のメニューだと、イーピンが雲雀に出したのは煮込みハンバーグ。
ニンジンやきのこ、そしてハンバーグをケチャップソースでじっくり煮込んだもの。
素朴な味は美味しくて、また作ってと頼んだ。
すると次の日はチーズハンバーグが出た。それはそれで好きなので食べたが………
さすがに三日目にデミグラス、そして今日は和風。味は違えど全部ハンバーグ。
好きな食べ物とはいえ、こうも続けば飽きてくる。これはもう言うしかないと雲雀は決心した。

「言いにくいんだけど………」
「はい?」
「好きなんだけどね。こう毎日続くとさすがに飽きてくるんだけど、ハンバーグ」
「あ!」

イーピンは口に手をあて、しまったというような顔をする。

「ごごごごめんなさい!すぐに違うの作りますね!!」
「いいよ。今日はこれで」

急いで片付けようとするイーピンの手を止めて、雲雀は微笑む。イーピンは申し訳なさそうに俯いた。

「ごめんなさい。私………」
「僕が美味しいって言ったから作ってくれてたんでしょ?だから、いいよ」

宥めるようにイーピンの頭を撫でる。それでもイーピンは悲しそうに顔を歪めている。だから。

「僕のために頑張ってる君の姿を見るのは好きだから。だからいいんだよ」

そう雲雀が言うと、ようやくイーピンはホッとしたように笑った。

「ああ…でも」
「はい?」
「明日は鮭が食べたい」


申し訳ないけど、しばらく肉は食べたくない。と雲雀は心の中で呟いた。




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好きなメニューでも続けば飽きるのですww






彼女の手、彼女の声 <イチルキ>



熱くもなく寒くもなく。そんな秋晴れのある日。
リビングのソファーに一護は寝転んだ。程よく窓から日が入って気持ちがいい。

「眠い………」

こうも気持ちがいいと、別に疲れているわけでもないのだが眠たくなってしまう。
ちょっとだけ……と一護は目を閉じた。

「…い……ご…一護」
「ん……?」

耳に心地よい声が届いて、一護はうっすらと目を開ける。
だが逆光で相手の顔が見えない。しかし先ほどの声で誰かはわかっていた。

「ルキ……ア?」
「いくら気候がいいとはいえ、こんな所で寝ていたら風邪をひくぞ」

いまだ覚醒しきれてない一護に呆れながら、ルキアはそっと一護の額を撫でる。
その手の温かさと感触があまりにも心地よくて、一護は再び目を瞑る。

「コラ!寝るな!!」
「ん〜………」

ルキアは軽く一護の体を揺すったが、一護は唸るだけで起きようとしない。
「全く…」と呟いて、ルキアは一護を起こすことを諦めた。代わりに一護の髪を梳く。
それがまた気持ちよくて、一護は「ん…」と声を出す。

「すまない。眠れないか?」
「……いいや。むしろ気持ちいいくらいだ」
「そうなのか?」

一護の答えが意外だったようで、クスクスと笑うルキア。その笑い声も一護の耳に心地よく響く。
目を瞑ったまま、一護は髪を梳くルキアの手に自分の手を重ねる。

「一護?」
「なぁ……ルキア」

そっと一護は目を開けてルキアの大きな瞳を見つめる。
一護に見つめられて、ほんのり頬を赤く染めながらルキアは何だ?と目で尋ねる。

「もっと話しかけて、もっと撫でて」
「え?」
「おまえの声聞いてると安心する。おまえに撫でられると気持ちよくなる」

まるで幼い子どもが母親に強請るようなお願い。
最初は驚いたルキアだったが、だんだんそんな一護が可愛らしく思えてきて………

「今日の貴様は甘えん坊だな、一護」

そう言って微笑むと、ルキアは一護のオレンジの髪を優しく梳き始めた。

「今日の夕飯は焼き魚と茶碗蒸しにしようと思ってるんだが、どうだ?」
「んー……うまそうだな」

窓から入る日を浴びながら、二人はゆったりとした時間を過ごした。




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恋人というより姉弟のような話になってしまいました。






貴方に繋がる <ヒバピン>



イーピンは今自分の目の前で起こっている光景を呆然と見つめていた。

「最近物騒だからね。イーピンちゃんも持ってた方がいいと思うの」

ニコニコ笑顔でそう言って、母親のように慕っている奈々から携帯を貰ったのは昨日のこと。
本日、イーピンは綱吉に呼ばれて日本のボンゴレ本部を訪れていた。
そして、綱吉の部屋に向かう途中で意外な人物に出会ってしまった。

「君…携帯持ってたの?」
「あ……昨日奈々さんがくれたんです。最近物騒だから携帯を持ってた方がいいって」

時間を見ようとカバンから携帯を取り出した丁度その時、雲雀に会った。
雲雀はイーピンが携帯を持っていることに驚いたようで、指で携帯を指しながら尋ねてきたのだった。

「君なら変な奴に遭遇しても撃退できると思うけどね。でも携帯は持っていた方が便利だからね」
「はぁ………」

曖昧に返事をしながら、イーピンは携帯をカバンの中に入れようとした。ところが………

「え?雲雀さん??」

スッと雲雀から携帯を取られ、イーピンは首を傾げる。しかし、雲雀とった行動に目を瞠って驚く。
雲雀はイーピンの携帯を開くと、イーピンの許可を得ることなく勝手に携帯を弄り始めた。

「ちょっと雲雀さん!何してるんですか!?」

イーピンは手を伸ばして雲雀から携帯を取り戻そうとする。しかし軽く雲雀にかわされる。
何度かチャレンジするが携帯を取り返すことができない。
そして手を伸ばすイーピンを尻目に、雲雀は自分の携帯も開いて何か作業を始める。

「もう〜!雲雀さん何してるんですか!?返してください!!」

なかなか携帯を返してくれない雲雀に、とうとうイーピンは怒鳴りつける。しかし。

「いいよ。もう終わったから」
「へ……って…きゃあ!?」

言うや否や、イーピンに向かって携帯を投げる雲雀。驚きながらイーピンは携帯を取る。

「いきなり投げないでください!大体、私の携帯に何したんですか!?」

ギッと雲雀を睨みつけるイーピン。すると雲雀は楽しそうに微笑んだ。

「入れといたから。僕の携帯の番号とメールアドレス」
「………へ?」

雲雀は更にイーピンに微笑みかけると、自分の携帯を手の中でいじりながら言った。

「電話もメールも嫌いだけど、君の電話とメールはしてもいいと思うんだよね」

「そういうことだから」と続けて、雲雀は去っていった。
去っていく雲雀を見つめながら、イーピンは呟いた。

「それって……雲雀さんに電話したり、メールしたりしていいってことですか?」

それはあなたに繋がってるってことですよね?




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素直に電話やメールをしてと言えない雲雀さん(´V`)






幼馴染 <イーピンとランボとフゥ太>



「最近、やっとイーピンに勝てたって思うよ」
「何が?」

しみじみと頷くランボを見て、イーピンは怪訝そうに首を傾げる。
するとランボは嬉しそうに笑って言った。

「だって俺、イーピンより背が高くなんたんだよ!男らしくなったと思わない!?」

『イーピンの方がちょっと背が高いね』
『ホント!?』
『また!?』

小学生の頃、背くらべでいつもイーピンに負けていたランボ。
その度にイーピンに『ランボは泣き虫で男らしくないから背が伸びないのよ』と言われていた。
しかし、中学に入ってからは背が伸びてきて、今ではイーピンを見下ろす程だ。
得意げになってるランボを見て、イーピンは眉間に皺を寄せる。

「でも………」
「え?」

ボソリと呟いた言葉に反応するランボ。
イーピンは右手を口元にあて、真剣な表情で呟いた。

「たとえ背が伸びても、泣き虫だったら男らしくないわよね」

カチンと固まるランボ。丁度その時、フゥ太が通りかかった。

「イーピン。雲雀さんが探してたよ」
「あ!いけない!!今度の任務のことで話があるって言われてたんだった」

「ありがとう」とフゥ太に礼を述べて立ち去るイーピン。
それに軽く手を振ってから、フゥ太はランボを見た。そして苦笑する。
ランボは目に涙を溜めて全身を震わせていた。

「ランボ。男なんだから泣いちゃダメだよ」

ポンポンとランボの頭を撫でるフゥ太。するとランボの目からポロポロと涙が零れる。

「イーピンのバカああああああああああああああああああ!!!!!」
「ランボ………」

フゥ太は更に苦笑した。

ランボがイーピンに勝つなんて絶対ありえないよね…と思いながら。



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姉に勝てない弟を見守る一番上の兄のつもりで書きました(笑)






乾杯しよう <イチルキ捏造シリーズ>



「もうすぐ私の誕生日だぞ。覚えているか?」

一護の部屋に来ていたルキアが突然言った。一護は首を傾げる。

「覚えてるも何も、初めて会った時からずっと祝ってるじゃねぇか」

死神として一護の目の前に現れてからずっと、誕生日を祝っている。家族と一緒に。
プレゼントも欠かさずに渡している。それを忘れたのだろうか?
そんなことを思っていると、ルキアがクスクスと笑い出した。

「いや…いつも家族で祝ってくれてるから、もしかして…ってちょっと思っただけだ」
「そこまで薄情じゃねぇよ。それに………」

恋人の誕生日を忘れるわけがない。
そう言おうとしたが、恥ずかしくて言えなかった。だから違うことを口にする。

「14日だけどさ…お前、暇?」
「大学が終わってからは暇だが…でも家で誕生日パーティーをするのではないか?」

不思議そうに尋ねるルキアを見て、一護は苦笑する。

「んー…パーティーは次の日にしてもらうことにした」
「何故だ?」
「いや。実はその日、店予約したんだよ」

「店?」と首を傾げるルキア。

「ちょっと酒が飲めるレストラン。お互い、一応二十歳になったんだし?」

お前は俺より100歳近く年上だから酒は飲めるだろうけど…と心の中で思う一護。
思わぬ一護の申し出に、ルキアは目をパチパチと瞬かせる。
そして突然、ルキアはクスクスと笑い始めた。

「何だよ?」
「いや…『大人の誕生日』ってヤツだなと思って」
「嫌なら別にいいけど」

笑われたことが恥ずかしかったのか、プイっと顔をそらす一護。
その仕草はまるで小さな子どものようで、更にルキアの笑いを誘う。

「あー!もう!!笑うなよ」
「すまん、すまん」

顔を真っ赤にして叫ぶ一護の横で、涙を流しながら笑い続けるルキア。

「ごめんって言ってるようには思えねぇ」
「すまんと言っておるだろう。それより一護」

呼ばれた一護が振り返るよりも早く、ルキアの両手が一護の顔を捕らえる。
そして耳元で囁いた。

「シャンパンとやらを飲みながら乾杯しよう。二人で」




web clap up 09.01.04



夜景の見える店で乾杯してほしいものです。









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