目を覚まして。こっちを見て。その瞳に俺の姿を映して。
待ちくたびれた君に
「こんなに遅くなるつもりはなかったのに」
そう呟きながら、一護は家に向かって走っていた。早く帰らないと、部屋で待っている死神サマに怒られると思いながら。
いつものように、死神の関係のことについて話をしようとした時だった。
「ノートがない………」
一護はしまったと顔を顰めて呟いた。
夜中、ルキアと二人で死神代行のことで毎日のように話をしているが、それはただの理由であって。実は毎日二人で勉強をしていた。というより、一護がルキアに勉強を教えていたのだ。
教えるついでに一護は次の授業の予習をしているのだが、ノートがなくなってしまったのだ。
「買い足すの忘れてたな……。ルキア、お前使ってないノートとかあるか?」
「ん?あるぞ」
そう言って、ルキアがカバンから出したノートはウサギの絵が載った可愛らしいものだった。思わず一護は顔を引き攣らせる。
「やっぱり…いい。そこのコンビニでノート買ってくるわ」
「そうか?せっかく可愛いのに」
残念そうにノートを見つめるルキア。一護はルキアにばれないようにそっと息を吐いた。
一護は上着を着て財布をポケットに突っ込む。そしてドアに向かった。ドアの前まで行くと、一護はルキアを見た。
「せっかくコンビニ行くから何か欲しいものとかあるか?」
「お土産を買ってきてくれるのか?なら白玉あんみつを買ってきてくれ」
「言うと思った」
一護は苦笑いしながらドアを開けて出て行く。出て行った一護にルキアは頬を膨らませながら言った。
「貴様だってチョコレートを買ってくるくせに」
家の近くのコンビニに着いて、一護はノートと白玉あんみつ、そして自分用にチョコレートを買った。ここまではいつもと一緒だった。だけどその日は違った。
「一護!」
呼ばれて振り返ると、啓吾と水色、それに見たことのない年上の女が二人、こちらに向かって歩いてきた。
「啓吾に水色?お前ら何してんだ?」
「聞いてくれ!一護!!俺はさっきまでこの綺麗なお姉さんたちとお食事してたんだぜ!!」
啓吾は涙を流しながら一護に言う。一護はチラリと啓吾の後ろにいる水色を見た。
年上の女二人と仲良く話している水色。女たちの目当てはどう考えても水色としか思えない。啓吾はただのオマケなんだろう。一護はそう思ったが、口には出さなかった。
「そっちの男の子もかっこいいね」
言いながら、女の一人が一護の横に立った。鼻に妙につく香水に思わず眉間に皺がよる一護。
「ねぇ?今度君も一緒にご飯食べに行かない?」
「結構です」
楽しそうに尋ねてくる女に一護は即答する。正直こういうタイプの女が一護は一番苦手だった。
「つれないな〜」と言いながら一護の肩に手を置く女。相手が女じゃなかったら絶対殴ると思いながら、一護はガマンをした。すると。
「ダメだよ。一護は誘っても絶対来ないよ」
意外にも一護を助けてくれたのは水色だった。水色が助けてくれるとは思わなかったので、一護は目を瞠った。しかし。
「一護は彼女と同棲してるからね。そんなことしたら怒られちゃうよね」
「んなっ!!」
天使のような悪魔の微笑みで爆弾発言をする水色に一護は絶句してしまう。
「彼女と同棲してるのか〜」と残念そうに呟く女。いやいや、お姉さん。俺、高校生だよ。同棲なんてするわけないじゃん。そこ突っ込めよ!と思わず心の中で突っ込む一護。というより。
「おい!同棲じゃない!同居だ!!親父や遊子たちだって一緒だし。それに俺たち付き合ってなんかねぇぞ!」
「そうだそうだ!一護と朽木さんが付き合ってるわけないだろう!!」
一護は水色に向かって叫ぶ。何故か一緒になって啓吾も否定していたが、とりあえず無視した。
すると水色は少し困ったように笑って言った。
「一護はもう少し自分の気持ちに正直になったほうがいいよ。あと、女の子の気持ちも理解しないとね」
(自分の気持ちに正直?女の気持ちを理解?)
水色が言ったことの意味が分からないまま、一護は家に向かって歩いた。
結局、あの後啓吾がしつこく話しかけてきたので30分近く一護はコンビニにいた。家を出てからの時間も入れると1時間以上ルキアを待たせてしまっていることになる。
早く帰らないと、俺が殺される…そう思いながら、一護は家に入り部屋に向かった。
「悪りぃ!遅くなった………」
勢いよくドアを開け、一護は怒って待っているであろうルキアに謝ろうとしたが………
「………………え?」
怒っていると思ったルキアは、一護のベッドで気持ちよさそうに眠っていたのだ。
一瞬呆気にとられた一護だったが、しばらくして盛大に溜息をついた。
「お前………女のクセに危機感ってのはねぇのかよ………」
一護はベッドの横に座って、ルキアの額を軽く叩いた。しかしルキアは起きる気配はない。思わず一護は苦笑する。
押入れ同居生活の頃は、ルキアの寝床は押入れだったので眠くなるとルキアは押入れに入って眠っていた。
しかし、今は家族公認の同居人で、部屋は遊子たちと一緒。以前のように一護の部屋にずっとというわけにはいかない。
それなのにルキアは気にならないのか、一護の部屋にずっと居たがる。この前、一護が風呂に入っている間に一護のベッドに勝手に寝ていたのだ。
これはマズイと思った一護はすぐにルキアを起こして注意したのだが、ルキアは不思議そうに一護を見つめて、わかったとだけ言った。
「………ったく。わかってねぇよ」
一護は再び溜息をつく。
いつからかは自分でもわからないが、一護はルキアを大事に思うようになっていた。
ソウル・ソサエティに連れて行かれたことや破面との戦いでルキアが瀕死の重傷を負ったことも関係しているのかもしれないが、彼女が側にいないと不安を感じるようになった。
だから今、ルキアが側にいてくれることがとても嬉しい。嬉しいが、意地っ張りな性格が災いしてそのことを伝えることができないでいた。
一護はそっとルキアの頭を撫でた。そして思う。そういえば、いつも自分は彼女を待たせているな…と。
いつも待たせて悪いな…と思っていた。思っていたが、ルキアを待たせたいと思う自分もいた。
自分に待たされて怒っている彼女の顔が。
「ゴメン」と謝って頭を撫でると、ほんの少しだけ頬を染めるその姿が。
「もう怒ってない」と優しく微笑むルキアが。
愛しくて、愛しくて、堪らない。
「早く目を覚ませよ………」
せっかく白玉あんみつ買ってきたのに。自分も早く買ったチョコレートを食べたい。
でも、今は白玉あんみつを美味しそうに食べるルキアの姿を見たい。
だから早く起きてもらいたくて、一護はルキアの頬に手をそえた。
「起きろよ。なぁ………?」
しかしルキアは起きない。だが、頬に置かれてある一護の手に自分の手を重ねて、ふわりと微笑んだ。
「いち……ご」
思わずドキリとした一護。ジッとルキアを見つめたが、どうやら寝惚けているようであった。
なんとなく、さっき言ったことを聞かれてなくて良かったと胸を撫で下ろす。
いまだ気持ちよさそうに眠っているルキア。起こすのは可哀想だと思い、一護は買ってきた白玉あんみつを冷蔵庫に入れようと立ち上がろうとした。ところが。
ルキアはしっかりと一護の手を握りしめていて離そうとしない。一護はフッと笑うとその場に座り込んだ。
「離れてほしくないんだったら、早く起きろよ」
そう呟いて、一護は待ちくたびれて眠ってしまった愛しい少女の額に軽くキスをした。
目を覚まして。君と話がしたいんだ。
こっちを見て。君の笑顔が見たいんだ。
その瞳に俺の姿を映して。君の世界に俺がいることを確認したいんだ。
君と過ごす。それだけで俺は幸せになれるんだ。
拍手と繋がってるよ話第三弾・イチルキです!!
これで拍手と繋がってるよ話が全部upすることができました。よかった・・・
こちらの話はイチルキは友達以上恋人未満というヤツです(笑)
お互い想い合ってはいるんですけどね。二人共意地っ張りだから伝えられないんですvv
そういう二人の関係も大好きです!!
何故か水色君が出張ってますが、お気になさらず(笑)
しかし、なんだかムッツリスケベな一護のお話のような気がしてきました;;;
ルキアが一護に襲われるのも時間の問題ですな←違う(苦笑)
しばらく繋がってるお話の方は拍手でupしておくので、拍手から見てください。
拍手を変えてもすぐにlogでupします!!
*繋がってる話はこちら
up 07.11.05
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